論点
本コクラン・レビューでは、呼吸法、視覚化、ヨガや音楽など、リラクセーションのための心身療法が分娩中の疼痛を軽減し、疼痛経験を改善するかどうかを検証した。この疑問の答えを導くために関連するすべての試験を収集および分析した(検索日:2017年5月)。
重要である理由
分娩疼痛は強烈であり、身体の緊張、不安や恐怖により悪化する。多くの女性は、薬剤や硬膜外麻酔などの侵襲法を使用せずに、分娩することを望んでいる。これらの女性は、分娩疼痛の強度を低減させ、分娩経験を改善させる上で役立つ補助療法に頼る場合がある。
多くの補助療法が分娩中の女性に用いられており、例えば、鍼治療、心身療法、マッサージ、リフレクソロジー、薬草療法、ホメオパシー、催眠、音楽、アロマセラピーなどが挙げられる。リラクセーションのための心体法は、出産前学級でこれらの技法のレッスンを介して、女性に広く普及している。リラクセーション法は、ガイド下イメージ法、段階的リラクセーション法(漸進的弛緩法)、呼吸法などがある。また、本レビューではヨガや音楽も含める。他のコクラン・レビューでは、分娩中の催眠、徒手法(マッサージやリフレクソロジー)、アロマセラピー、鍼治療/指圧療法を対象としている。これらのリラクセーション法の多くは、疼痛経験を低減するために用いる対処法である。これらの技法は、ストレスや疼痛感覚を低減させるための実践法を使用している。女性が自身のケアについて情報を得た上で判断できるよう、これらの療法が有効かつ安全であるかどうかを検討することは重要である。
得られたエビデンス
分析のためにデータを使用できた女性1731例対象の15試験を特定した。試験は世界各国で行われており、ヨーロッパ・スカンジナビア各国、イラン、台湾、タイ、トルコ、米国などが含まれる。
リラクセーション法、ヨガ、音楽は分娩痛の管理に役立つことが判明したが、エビデンスの質は低い〜非常に低く、さらなるデータが必要である。また、これらの試験では、これらの技法が使用される方法についてばらつきがみられた。これらの療法が介助経腟分娩や帝王切開に対して影響することを示す明確なエビデンスはない。これらの技法が出生時の乳児の状態に影響を与えるかどうか判断するには、データは不十分である。
意味するもの
一部のリラクセーション法、ヨガ、音楽の使用は、疼痛強度の低減、分娩時における女性のコントロール感や満足感に役立つ可能性がある。しかし、これらの試験で使用した技法の種類が多岐にわたるため、何が女性に役立つか特定することは難しい。したがって、さらなる研究が必要である。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.12.25] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 【CD009514.pub2】