レビューの論点
人工呼吸器を使用した新生児において、肺リクルートメント手技(LRMs)を行った場合、行わなかった場合と比較して、死亡率と呼吸器疾患の罹患率の低下に役立つか?
背景
重症の新生児(生後4週(28日)までの乳児)は、通常、呼吸をサポートするために挿管(気管への呼吸管の配置)と従来の人工呼吸器(呼吸器の使用)を必要とする。この治療法は多くの場合、命を救うことができるが、同時に肺損傷のリスクもある。LRMsは、人工呼吸患者の肺損傷の発生を抑え、呼吸器系の治療結果を改善することが示唆されている。LRMでは、意図的に気道の圧力を短時間高めることで、肺の虚脱部位を再開通させる。LRMsは、人工呼吸器を使用した成人に有効であることが証明されているが、新生児への使用に関するエビデンスは十分ではない。新生児にLRMsが適しているかどうか、効果があるかどうかについては、意見がまとまっていない。
研究の特徴
2020年4月13日までの検索で、人工呼吸器を使用した新生児にLRMsを行ったことに関して調査した研究が4件見つかった。呼吸窮迫症候群の早期産新生児(妊娠30週以前に出生)44名を対象とした2件の研究では、出生後数時間以内にLRMsを行った場合と日常診療を比較していた。12人の新生児を対象とした、3件目の研究では、呼吸チューブを吸引した直後に適用された2種類のLRMsを、日常的なケアと比較していた。48人の小児患者(新生児を含む)を対象とした4件目の研究でも、吸引後のLRMsと日常的なケアを比較していた。新生児の対象者に関するデータを分離できなかったため、この研究はレビューにデータを組み入れなかった。
主な結果
早期産児を含む2つの研究からのデータを組み合わせると、死亡率、気管支肺異形成症(早産児の慢性肺疾患)の発生率、酸素補充療法の期間、および人工呼吸の期間などの治療結果について、LRMsと通常のケアの間に明確な違いは見つからなかった。一方、12名の新生児を対象としたデータでは、2種類の異なるLRMsを行うことで、日常的なケアと比較して、吸引後の肺活量の回復に役立つ可能性が示唆された。また、LRMの1つ(二重PEEP(呼気終末陽圧)と呼ばれる)は、血圧のわずかな低下を引き起こす可能性があり、これは新生児に悪影響を与える可能性がある。
エビデンスの確実性
これらの結果のエビデンスの確実性は、対象となった研究が小規模で、方法の限界によりバイアスの影響を受けやすかったため、低度または非常に低度であった。人工呼吸器を使用した新生児にLRMsを行うことのエビデンスに基づくガイダンスは、まだ十分ではない。今回のレビューは、この分野では確実性の高いエビデンスが不足していることを認識させ、さらなる研究を促すものである。人工呼吸器を使用した新生児において、LRMsは有効な可能性はあるが不確実であるという今回の知見を踏まえ、さらなる研究が必要である。
《実施組織》 堀本佳誉、小林絵里子 翻訳 [2022.02.25]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD009969.pub2》