アルツハイマー型認知症の人の認知症予防や認知機能の低下を遅らせるための栄養補助食品スーベナイド

レビューの論点

アルツハイマー病(AD)による軽度認知障害(MCI)を有する人が、特許を取得した栄養補助食品「スーベナイド」で認知症の発症リスクを下げることができるかどうかを調べた。また、MCIまたはADによる認知症のいずれかの段階の人を対象に、記憶力やその他の思考力、日常生活動作能力、副作用への影響を調査した。

背景

アルツハイマー病は脳の病気である。アルツハイマー型認知症は、高齢者に影響を与える最も一般的な原因である。記憶力や思考力の低下がひどく、日常生活のあらゆる場面で完全に自立できなくなったときに認知症になると言われている。ADはゆっくりと発症するため、認知症が本格的に進行する前に症状を把握することも可能である。この認知症前段階は、AD患者の記憶力や思考力の低下が見られるものの、通常の活動を自立して行うことができる状態で、ADによる軽度の認知障害、または「前駆性」ADとして知られている。

スーベナイドは、ADの脳機能改善を目的とした特許取得済みのビタミン・ミネラルミックス(フォルタシンコネクト™)である。1日1回飲むものである。通常の食事に加えて、医師の管理のもとで摂取することを想定している。

エビデンスの検索

2020年6月までに発表されたランダム化比較試験(RCT)のうち、スーベナイドを用いた16週間以上の治療とダミーサプリメント(プラセボ)を用いた治療を比較したものを系統的に検索した。比較が公正であるために、各参加者が スーベナイド またはプラセボを与えられたかどうかは無作為に決定されなければならなかった。

主な結果

総勢1097名の参加者を有する3つのRCTがレビューに含まれた。2つの試験では、24週間の治療期間をかけて認知症の人を対象にスーベナイドを調査した。そのうちの1つにはADによる軽度から中等度の認知症の527人、もう1つにはADによる軽度の認知症の259人が含まれていた。3つ目の試験では、前駆期のADの人311人を対象に、2年間のスーベナイドの使用状況を調査した。

いずれの試験もよく計画されていると考えたが、被験者の症状の重症度や結果の測定方法に違いがあったため、各試験由来のデータを数値的に1つに統合することができなかった。したがって、我々が報告する結果はすべて単一の各試験に基づいており、このレビューの結果には中程度の信頼性しかない。これは、さらなる研究によって結果が変わる可能性があることを意味している。

結果として、スーベナイドを毎日2年間服用していた前駆期のAD患者は、プラセボを服用していた患者に比べて、おそらく認知症を発症する可能性が低いことがわかった。

スーベナイドは、おそらく、前駆期のAD患者(2年間の治療後)やADによる軽度または中等度の認知症患者(24週間の治療後)の記憶力やその他の思考能力の測定にはほとんど、あるいは全く効果がなかったと思われる。また、ADによる軽度または中等度の認知症の人が日常生活動作を管理する能力にも、ほとんど影響はなかったのではないかと思われる(24週以降も)。

2つの研究では、記憶力や思考力と実践的なスキルを組み合わせたアウトカム・スケールを用いた(認知機能的アウトカムの組み合わせと表現されている)。2 年間 スーベナイドを摂取した前駆期 AD の人々 の間でこの結果(記憶力や思考力と実践的なスキルを組み合わせたアウトカム・スケール)に スーベナイドはおそらく少し好ましい影響を及ぼしたであろう。しかし、スーベナイドを24週間服用した軽度から中等度のAD認知症患者では、この結果に対するスーベナイドの効果はおそらくほとんどなかったと思われる。

試験で報告された有害事象は数件しかなく、そのうちのどれかがスーベナイドの副作用なのかどうかはわからなかった。

研究の資金提供元

2つの研究は、スーベナイドのメーカーから資金提供を受けていた。3つ目の研究(前駆期のAD)は、ヨーロッパの助成金によって資金提供された。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大 小林絵里子 翻訳[2020.12.24]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD011679.pub2》

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