局所抗菌薬か全身投与抗菌薬:慢性化膿性中耳炎(滲出液を伴う持続性か再発性外耳炎)にはどちらが効くか?

なぜこの問題が重要なのか?

慢性化膿性中耳炎(CSOM)は、慢性中耳炎(COM)とも呼ばれ、2週間以上続く中耳の感染性炎症である。CSOMの患者さんには、通常、再発性または持続性の滲出液(鼓膜の穴や裂け目から液体が漏れ出すこと)と難聴がみられる。

抗菌薬(細菌感染と戦う薬)は、CSOMの最も一般的な治療法である。抗菌薬は:

- 滴下、スプレー、軟膏またはクリーム(局所抗菌薬)の形態で体の一部(局所)に投与することができる;または
- 注射や経口(口から)投与することで、全身を(全身抗菌薬)治療することができる。

CSOMの治療において局所と全身のどちらの抗菌薬が優れているのか、また、有害(望まない)作用は異なるのかを調べるために、調査研究からのエビデンスを検討した。

どのようにエビデンスを特定し、評価したか?

まず、成人または小児のCSOMを1週間以上追跡調査し、比較した研究を医学文献で検索した。

- 同じ抗菌薬の局所と全身投与形態;または
- 局所抗菌薬と異なる全身抗菌薬との比較。

全ての研究から結果を比較し、得られたエビデンスを要約した。最後に、研究方法や規模、そして研究間結果の一貫性などに基づいて、エビデンスの確実性を評価した。

レビューの結果

合計445人を対象とした6件の研究を見つけた。5日間から2週間の抗菌薬治療を受け、最長で21日間の追跡調査が実施されていた。研究はスペイン(3件)、イタリア(2件)、香港(1件)で実施された。3件の研究では、研究資金や医薬品の提供者についての情報を記載していた:1件の研究では大学から資金提供を受け、2件の研究では製薬会社から医薬品が提供されていた。

研究では以下のような比較が行われていた。

- キノロン系点耳薬とキノロン系経口薬との比較(4研究):
- アミノグリコシド系注射薬に対するキノロン系点耳薬(1研究):
- アモキシシリン・クラブラン酸経口薬に対するオフロキサシン点耳薬 (1研究)。

キノロン系点耳薬とキノロン系経口薬の比較

キノロン系経口薬に比べ、キノロン系点耳薬は1~2週間後に耳漏が解消される可能性がやや高くなるかもしれない。以下のことについては、2つの治療法に違いがあるかどうかはわからない。

- 聴力:
- 耳の痛み:
- 顔面神経麻痺(顔の筋力が弱くなる)などの重篤な合併症:
- 髄膜炎(脳内の液体や膜の炎症):または
- 耳毒性(薬によって聴力や平衡感覚に問題が生じる)。

これは、これらの効果に関する情報を報告した研究がないか、利用可能なエビデンスに対する信頼度が低すぎるためである。

キノロン系点耳薬とアミノグリコシド系注射薬の比較

CSOMの治療において、キノロン系点耳薬がアミノグリコシド系注射薬よりも優れているか劣っているかはわからない。この点に関して研究したのは1件のみで、十分に強いエビデンスが得られなかった。

アモキシシリン・クラブラン酸経口薬に対するオフロキサシン点耳薬

CSOMの治療において、オフロキサシン点耳薬がアモキシシリン・クラブラン酸経口薬よりも優れているか劣っているかはわからない。この点に関して研究したのは1件のみで、十分に強いエビデンスが得られなかった。

4週間後の耳漏や健康関連の生活の質(QOL)に対する異なる治療法の効果比較に関する情報を報告した研究はなかった。

この結果が意味すること

局所抗菌薬は、耳漏の解消に全身抗菌薬よりも効果的であるかもしれない。聴力の改善には、全身抗菌薬と局所抗菌薬のどちらが良いかはわからない。健康関連QOLや耳痛に対する局所と全身抗菌薬の効果を比較した説得力のある研究によるさらなるエビデンスが必要である。また、副作用に関する情報ももっと必要である。

このレビューの更新状況

本コクランレビューのエビデンスは、2020年3月現在のものである。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、星進悦 翻訳[2022.03.15]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013053.pub2》

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