レビューの論点
高血圧のスクリーニング方法の違い(集団、対象、任意)は、病気や死亡の減少にどのような効果があるか?
背景
高血圧は、長期にわたる非感染性疾患(NCD)であり、高血圧症とも呼ばれている。血圧は、最大値と最小値の2つの測定値(収縮期血圧(SBP)と拡張期血圧(DBP))で表される。一般的に、成人の場合、安静時の血圧がSBP≧130/140 mmHgまたはDBP≧80/90 mmHgの状態が持続すると高血圧と診断される。
動脈の血圧が継続的に上昇していても、多くの場合は高血圧では症状が出ない。それにもかかわらず、長期的に見れば、高血圧は心不全、脳卒中、視力低下、慢性腎臓病などのリスクを高める。不健康な食生活、多量のアルコールやタバコの摂取、運動不足の人は、高血圧のリスクが高いと言われている。
高血圧を早期に発見し、適切な治療を行い、良好なコントロールを行うことで、高血圧に伴う合併症のリスクを低減することができる。高血圧症のスクリーニングによる早期発見は、医療関連コストの抑制につながる可能性があるが、高血圧症の負担軽減には、ある程度、行動や社会経済的なリスク要因(収入、職業、教育レベルなど)への対応が必要である。したがって、軽度の高血圧を早期に発見することで、長期的に医療関連コストによい影響を与え、入院の必要性や重篤になりうる高血圧関連の合併症の管理を軽減することで、健康上の転帰を改善できるかどうかは不明であるとしている。
レビュー方法
このテーマに関する様々なデータベースを2020年4月9日まで検索した。公表されているかどうかに関わらず、あらゆる言語で書かれた研究を検索した。高血圧に対する1種類のスクリーニングとスクリーニングを行わない場合、すなわち、集団に対する検査とスクリーニングを行わない場合、標的検査とスクリーニングを行わない場合、任意型検査スクリーニングとスクリーニングを行わない場合を比較した研究を対象とすることを計画した。参加者が健康な青年、成人、高齢者で、臨床に関する評価項目、医療システムに関する評価項目、有害事象を測定している研究に関心があった。
主な結果
上記の基準を満たす研究はなかった。
エビデンスの質
高血圧に関連した病気や死亡を減らすために集団検査、標的検査、任意型検診のいずれの方法が有効かを示す確実性の高いエビデンスはない。
《実施組織》冨成麻帆、 阪野正大 翻訳[2021.05.11]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013212.pub2》