慢性副鼻腔炎に対する生物学的製剤

レビューの目的

生物学的製剤とは、体の組織の炎症による病気を治すために使われることが多くなってきた、生物を用いて作られる薬剤の総称である。このレビューの目的は、これらの薬物のいずれかが慢性副鼻腔炎の人の治療に有効であるかどうかを確認することである。慢性副鼻腔炎の人では、鼻や副鼻腔の炎症が長期的に問題となる。その結果、鼻が詰まったり、鼻水が出たり、頬が痛くなったりする。ステロイドの点鼻薬を長期的に使用する必要があることが多い。また、慢性副鼻腔炎の人の中には、鼻の中にポリープができる人もいる。これらは、症状を悪化させる可能性がある。

要点

新しい生物学的製剤のひとつであるデュピルマブは、鼻ポリープもある重度の慢性副鼻腔炎で、すでに鼻用ステロイドスプレーを服用している人に効果がある。症状が改善され、重篤な副作用もない。もう一つの類似薬であるメポリズマブも同じような効果があるかもしれないが、それについてはあまり確かではない。3つ目の薬物であるオマリズマブも、鼻ポリープを伴う重症の慢性副鼻腔炎の人の症状を改善するようである。

レビューでは何が検討されたか?

慢性副鼻腔炎の患者さんに、新しい生物学的製剤あるいはプラセボ(ダミー)のどちらかを投与した臨床試験を検索した。3か月以上治療を受けていることを条件とした。患者さんの症状、全身的な健康状態、副作用に関する薬物の影響を測定した研究を探した。

レビューの主な結果

治験で調査した人たちは、ほとんど全員が鼻ポリープを伴う重度の慢性副鼻腔炎で、鼻用ステロイドスプレーを使用していた(そのため、このような人たちに対する薬物の効果に関する結論しか出すことができない)。その結果、3種類の薬物を対象とした10件の研究が見つかった。持っている情報のほとんどは、デュピルマブという薬剤の効果を調べた2件の大規模試験(約800人の患者を対象)から得たものである。

デュピルマブの効果

24週間の治療後、デュピルマブ服用者は非服用者に比べてQOL(生活の質)が向上していた。平均して、症状もおそらく良くなっており、重い副作用もプラセボを飲んでいる人と比べて多くはない。

メポリズマブの効果

メポリズマブの効果は、はるかに少ない数の患者さんで検討されたので、結果についてはあまり確かではない。デュピルマブと同様の効果が期待できそうな薬物と言える。

オマリズマブの効果

今回のレビュー更新(2021年)では、オマリズマブの使用を検討する2件の新たな研究を確認した。24週間後、オマリズマブを服用した人は、服用しなかった人に比べて、慢性副鼻腔炎の症状に関して、より良いQOLを得ていた。服用者における副作用の増加は認められなかったが、調査対象者が少なすぎるため、確実なことは言えない。

本レビューの更新状況

このレビューのエビデンスは、2020年9月までのものである。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、杉山伸子 翻訳[2022.03.09] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン日本支部までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013513.pub3》

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