性的虐待と性暴力に対する介入に関するサバイバー、家族、専門家の体験談

このレビューの目的は何か?

このレビューの目的は、性的虐待や性暴力のサバイバーを支援し、健康と幸福を向上させるための介入を受けたサバイバーの経験、およびその家族やそのような介入を提供した専門家の経験を探ることであった。そのために、介入に対する見解や経験を記述した37件の研究を分析した。

要点

- サバイバー、その家族、専門家は、介入が行われる組織の環境(例えば、その場所や組織内の全スタッフのアプローチ)が、介入の経験やそこから得られる利益にとって非常に重要であることを強調していた。

- 参加者は、セラピーや介入によって、心身の健康、気分、対人関係、トラウマの理解、生活の幅広い領域で再活動できるようになったなど、ポジティブな結果(評価項目)を得たと話した。

- 参加者は、介入の恩恵を最もよく受けることができる介入とその設定の特徴は、しばしば障害となりうる特徴であると説明した。例えば、セラピストとの関係がオープンで温かいものであれば利益となるが、そのような関係が実現できない場合は障害となる。

- サバイバーのサブグループに関連する介入(例:信仰に基づく介入)、およびすべてのサバイバー(例:男性、障害者、その他の少数民族出身のサバイバー)に包摂されているという感覚を与える程度も、各サバイバーがそれらから最大の利益を得るために重要であった。

検討した内容

性的虐待や性暴力のサバイバーを支援する介入に参加したサバイバーや専門家、またはこれらの介入を完了したサバイバーを支援した家族の経験を調査した研究を探した。

以下のような研究を対象とした:

- 子どもまたは大人、あるいはその両方の時に性的虐待を受けたサバイバーを治療の対象にしたもの。

- 年齢、ジェンダー、セクシュアリティ、民族、障害の有無にかかわらず、参加者を募集したもの。

研究を組み入れる際には、国や設定を問わなかった。

本レビューの主な結果

レビューに関連する97件の研究のうち、37件を分析した。37件の研究のほとんどは高所得国のもので、サバイバーを対象としたものであった。これらの研究に含まれる性的虐待や性暴力を経験した人を支援し対応する介入は多岐にわたり、複数の研究で検討された介入は1種類のみであった。

今回のレビューでは、人々が異なるタイプの介入の特徴(例えば、マインドフルネス療法やレイプカウンセリングに関する側面)について議論するのではなく、むしろ、人々が重要だと考える介入に関連する幅広い特徴について言及したことが強調された。例:

- セラピストとの良好な関係が重要であることを強調した。

- グループの他のメンバー(介入がグループで行われた場合)が、多かれ少かれなく含まれていると感じることができること。

また、受付や他のスタッフの場所や親しみやすさなど、より広い介入の場の特徴が、介入から利益を得ることができるかどうかに重要な影響を与えることも強調した。

このレビューでは、サバイバーが介入からさまざまな利益を得ていることが示されたが、そのほとんどは、こうした介入の効果を調べる、より定量的な調査研究において検討されていない。このような研究は精神的な健康について検討されることが多いが、今回のレビューでは、サバイバーは介入によって次のような利益も得られたと考えていることが明らかになった。

- 身体の健康、

- 気分、

- 他者との関係、

- 信頼、

- 境界線を設定し、自己主張する能力。

このレビューの更新状況

本レビューは、2021年5月までに公表された研究を含んでいる。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、小林絵里子 翻訳 [2022.10.10]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013648.pub2》

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