要点
- 乳幼児の手術後の痛みを管理するためのオピオイド(鎮痛薬の一群)の有益性とリスクに関する十分な質の高いエビデンスは見つからなかった。対象となる研究は4件しか見つからず、信頼できる結果を出すのに十分な数の乳児が登録されていなかった。
- オピオイド、その他の医薬品、非医薬品ベースの治療法の利益と潜在的有害性をよりよく推定するためには、より大規模でデザインされた研究が必要である。
乳児の手術後の痛みを抑えるために、なぜオピオイドが投与されるのか?
乳児は(特に生後4週間は)手術を受けなければならないことがしばしばある。大人と同様に、これらの手術後も継続的な痛みの管理が必要であり、オピオイドは一般的に乳児の手術後の痛みを和らげるために使用される。
何を調べようとしたのか?
手術を受ける乳児にオピオイドを投与した場合の影響を以下のものと比較して調べようとした:
1) 無治療またはプラセボ(薬を含まないが、見た目や味が試験中の薬と同じ「ダミー」の治療);
2)薬を使わない治療法(甘い溶液など);
3) 他の医薬品;
4) 異なる種類のオピオイド
何を行ったのか?
オピオイドと上記の4種類の治療法を比較した研究を検索した。その結果を比較、要約し、研究方法や規模などの要素から、エビデンスに対する信頼性を評価した。
何が見つかったのか?
331人の乳児を対象とした4件の研究を対象とした。最も大規模な研究は171人の乳児を対象としたもので、最も小規模な研究は15人の乳児を対象としたものであった。
- 2件の研究では、オピオイドとプラセボを比較した。オピオイドが死亡率に影響を及ぼすかどうかは不明である。痛み、長期的な発育、視力障害(未熟児網膜症)、脳への出血(脳室内出血)を報告した研究はない。
- 1件の研究では、1種類のオピオイドと別の種類のオピオイドを比較した。フェンタニルがトラマドールと比較して死亡率に影響を及ぼすかどうかは不明である。痛み、長期的な発育、視力障害、脳への出血を報告した研究はない。
-1件の研究では、オピオイドと別の種類の鎮痛薬を比較した。オピオイドのモルヒネがパラセタモールと比較して痛みに効果があるかどうかは不明である。長期的な発育、死亡率、視力障害、脳への出血を報告した研究はない。
エビデンスの限界は?
研究が少なく、エビデンスが十分でないため、結果を確信することはできない。研究を実施していた人が、何の治療を行っているかについて知っていた可能性があった。すべての研究において、目的とするすべての情報が得られたわけではなかった。
本レビューはいつのものか?
2021年5月までに入手可能な研究を検索した。
《実施組織》 阪野正大、杉山伸子 翻訳[2023.08.30]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD014876.pub2》