背景
アンケートは、多数の回答者からデータを収集し、デリケートなトピックを取り扱う便利な方法を提供し、他のデータ収集手法よりもリソースをあまり必要としないため、公衆衛生および臨床研究において重要なツールである。スマートフォンまたはタブレットで実行されているアプリを介してアンケートを配信することで、コストを削減しながら、これらのツールによって提供されるデータ収集の拡張可能性と速度を最大化できる。ただし、このテクノロジーが広く採用されるようになる前に、それが収集された回答の質にどのように影響するかを理解する必要がある。特に、データの品質が多くの公衆衛生およびヘルスケアの決定をサポートする根拠に与える影響を考慮する場合はそうである。
目的
このコクランのレビューでは、アプリを使用して調査を提供することが、回答の質のさまざまな側面に与える影響を評価した。これらには、回答率、データの正確性、データの完全性、調査アンケートに回答するまでの時間、回答者の受容性が含まれる。
方法と結果
2007年1月から2015年4月までに発表された研究を検索した。14件の研究を含め、2,272人の参加者からのデータを分析した。研究間の違いが大きかったので、メタアナリシスは行わなかった。代わりに、各研究の結果について説明する。対象となる研究には、色々な要素が均一化されたものと均一化されていないものの2種類があった。制御された設定とは、調査が行われた場所と日付、時刻、使用されたテクノロジーの種類、回答者が技術的な問題に対処するために利用できるヘルプのレベルなど、医療従事者または研究者が潜在的な交絡因子をより適切に制御できた研究または臨床的な環境を指す。制御されていない設定とは、これらの研究環境または臨床環境以外の場所(たとえば、回答者の自宅)を指す。アプリは両方の設定で紙、ラップトップ、SMSなどの他の配信手段と同等である可能性があることがわかった。アプリが他の配信手段よりも完了時間を短縮できるかどうかは不明である。代わりに、私たちの調査結果は、臨床集団の特性、調査とインターフェイスのデザインなどの要因がこの結果への影響を緩和できることを示唆している。データの完全性とサンプリングプロトコルの遵守は、制御されていない設定でのみ報告された。我々の結果は、アプリはより完全なデータセットをもたらす可能性があり、SMSではなく紙と比較してサンプリングプロトコルへの準拠を改善する可能性があることを示しているかもしれない。回答者の受容性には複数の定義があり、対象となった研究全体で標準化することはできなかった。最後に、対象となったどの研究も、反応率やデータの正確性について報告していなかった。
結論
全体として、アプリがアンケート調査の回答に与える影響について明確な推奨を行うための十分なエビデンスはない。アプリが使用されているかどうかに関係なく、調査アンケートの意図された臨床アプリケーションとその意図された実施頻度が同じである限り、データの同等性は影響を受けない。今後の調査では、ユーザーの相互作用、調査アンケート、および介入の設計が、データの同等性と、このレビューで評価される他の結果にどのように影響するかを検討する必要があるかもしれない。
《実施組織》 阪野正大、増澤祐子 翻訳[2020.05.09]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《MR000042.pub2》