レビューの論点
早期産児に与える母乳に炭水化物を添加した場合、添加しない場合と比較して、大きな副作用を生じることなく、発育、体脂肪、肥満、心疾患、高血糖および脳の発達を改善するのか?
背景
早産児の炭水化物摂取量が不足すると、発育や発達が悪くなる可能性がある。早産児には母乳が最適な栄養方法だが、母乳だけを与えていると栄養成分的に不十分な場合がある。母乳に炭水化物を加えると効果があるかもしれない。しかし、早産児の成長を促進するために母乳に炭水化物を添加することの利点と有害性を評価するための十分なデータは見つけることができない。
研究の特性
早産児75人を対象とした1件の試験では、母乳にプレバイオティクス(炭水化物の一種である)を余分に添加した場合の効果について、非常に質の低いエビデンスが得られた。同じ研究者による2番目の論文では、試験の盲検化と無作為化に関して異なる方法が報告されていた。我々は、これらの出版物が同じ試験を記載していることを確認したが、どちらの方法が正確であるかは明らかにされていない。発表されたデータから分析を再現することができなかった。検索は2019年8月時点のものである。
主な結果
プレバイオティクス炭水化物の補給は、30日目の早産児の平均体重を増加させ、対照群と比較して入院期間を短縮する結果となった。プレバイオティクスを補った群と補っていない群の間で、摂食不耐性(訳注:下痢や嘔吐など、があり、経腸栄養を吸収がうまくいかない状態)や壊死性腸炎のリスクに明確な違いがあることを示すエビデンスはない。母乳に余分な炭水化物を加えることで、短期・長期的な成長、体脂肪、肥満、脳の発達、心の問題などに効果があることを示すデータは他にはなかった。
結論
早産児において、母乳に余分な炭水化物を添加することの短期的および長期的効果に関するエビデンスは不足している。このシステマティックレビューでは、早産児で母乳にプレバイオティクス炭水化物を添加することの効果について、方法や分析に関する不確実性とともに、非常に質の低いエビデンスが発見された。単一の試験にはイランの早産児のサンプルが含まれていたため、エビデンスは一般化できないと考えられる。しかし、評価されたアウトカムはすべての早産児に共通しており、この試験では、母乳にプレバイオティクス炭水化物を添加することが発展途上国でも可能であることが示されている。母乳を飲ませている早産児に対して、さまざまな種類と濃度の炭水化物を補給することの利点と有害性を評価するために、さらなる研究が必要である。現在、早産児への消化性炭水化物の補給は、多栄養の母乳強化の一環として行われている。
《実施組織》 小林絵里子、冨成麻帆 翻訳[2021.03.06]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD000280.pub3》