叢生(そうせい)とは?
歯が生える(歯肉から口の中に突き出る)とき、口の中に十分なスペースがないと、歯がねじれたり、突き出したり、後ろに下がったり、重なったりすることがある。乳歯を虫歯や外傷で早期に失うと、永久歯が混み合ってしまうこと(叢生)がある。このような歯並びが子供の自尊心に影響を与えたり、痛みや破損、咀嚼の問題を引き起こしたりする場合は、矯正歯科医に紹介し、矯正する場合がある。矯正歯科は、顎や顔の成長、歯の成長や噛み合わせの発達に関わるものである。
矯正治療とは?
叢生が軽度(4mm以下)であれば、歯列矯正で予防・矯正することが可能である。また、叢生が中等度(4~8mm)または重度(8mm以上)の場合は、一部の歯の抜歯が必要になることもある。固定式の歯列矯正装置は永久歯に使用される。取り外し式の歯列矯正装置は、乳歯と永久歯、またはその両方に使用することができる。乳歯や永久歯は抜歯できる。
固定式歯列矯正装置
固定式歯列矯正は、歯に接着剤で部品を取り付け、ブラケット(注釈:歯の表面に当てる部品)にワイヤーを通して力をかけ、歯を動かして矯正する方法である。ワイヤーは、金属製のタイ(注釈:オーリング(ブラケットの輪ゴム)の周りに取り付けられたワイヤー)、小さな輪ゴム、またはブラケットに組み込まれたクリップで固定する(「セルフライゲーション」)。
リンガルアーチ(LLA)やリップバンパー(LB)は、下の奥歯(臼歯)を保持しながら、下顎の前歯を矯正して前方に移動させるものである。歯にかかる圧力を取り除くために、LLAワイヤーは歯の内側に、LBワイヤーは歯の外側に配置する。0.9mmのステンレス製ワイヤーの両端を奥歯(大臼歯)の周りに金属製のバンドに取り付け、LBワイヤーには前面にプラスチックコーティングを施している。
固定式歯列矯正では、ヘッドギア(口の外のフレームに取り付けるストラップ)、振動板、レースバック(歯を支える細いワイヤー)などを追加で使用することもある。
取り外し式歯列矯正装置
取り外し式の矯正装置は、通常、歯を動かすアクティブパーツと、矯正装置を固定するクリップを結合する硬質プラスチックでできている。取り外し可能な装具の中には、柔軟なプラスチックで成形したものもある。
シュワルツ(床矯正装置)は、週に一度、親がネジを回して、下顎のアーチを広げ、永久歯が移動できるスペースを確保する。
萌出誘導装置(EGA)は、永久歯が萌出する際に、より良い位置へ誘導する装置である。下顎を前方に固定する上下一体型の装具で、前歯の歯並びや側歯の噛み合わせを改善するためのガイドスロットが付いている。
抜歯
乳歯(犬歯)は、大人の歯と乳歯が混在している場合に、他の歯が移動できるスペースを確保するために抜歯される。
親知らず(第三大臼歯)は、他の歯に負担をかけないようにするため、生える時期(10代前半)から大人になるまで、いつでも抜歯することができる。
何を知りたかったのか?
16歳以下の小児の叢生予防・矯正に用いられる矯正治療(固定式歯列矯正、取り外し式歯列矯正、抜歯)の効果に関する科学的研究を評価することを目的とした。これらの治療法を無治療、遅延治療、プラセボ(見せかけの治療)、他の矯正治療と比較した研究を検索した。
レビューの対象とした試験
さまざまな国の7歳から16歳までの1,314人の子どもの結果を提示した24件の研究を対象とした。20件の研究では固定式歯列矯正、2件の研究では取り外し式の歯列矯正、2件の研究では抜歯を検証している。
主な結果
固定式歯列矯正装置および関連品
下唇のバンパーは、大人の歯が生え始めたときの叢生を防ぐことができる。ニッケルチタン製のワイヤーは、銅製のニッケルチタン製のワイヤーよりも叢生を改善できる可能性があり、ニッケルチタン製のアーチワイヤーは一本線よりも撚り合わせた多本線(同軸)の方が良い可能性がある。しかし、これらの知見は確かなものではない。
その他の比較対象については、叢生の緩和について、一方のグループが他方のグループよりも優れている、あるいは劣っているということを示すことはできなかった。
取り外し式歯列矯正装置と関連品
シュワルツの装置は、9か月後の測定で、下アーチの叢生を減少させる可能性がある。萌出誘導装置を1年間使用することで、叢生の可能性が低くなる可能性があるが、これには他の理由があるかもしれない。また、これらの知見は確かなものではない。
抜歯
親知らず(第三大臼歯)を抜くことは、後々の叢生に影響を与えないようである。下顎のとがった乳歯(犬歯)を抜くと、短期的には叢生が減る可能性はあるが、これは確かなことではない。この知見には、おそらく他の理由もあるはずだ。
エビデンスの限界は何か?
エビデンスは不明である。さまざまな治療法を試す小規模の個別研究で構成されている。その中には、実施方法に問題があるものもある。これらの結果を確信することはできないが、今後の研究によって結果が変わるかもしれない。
このレビューの更新状況
本エビデンスは2021年1月現在のものである。
《実施組織》屋島佳典、阪野正大 翻訳[2022.04.13]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD003453.pub2》