背景
喫煙は、世界中で疾患や死亡の主な原因である。多くの喫煙者が禁煙を望んでいるが、非常に困難である。禁煙は人々の健康を大いに増進させる。お金やクーポン券などは、喫煙者に禁煙を促すことができ、禁煙が継続した場合には報酬として与えられる。これらのスキームは、職場、診療所、時にはコミュニティプログラムとして実行できる。
研究手法
2018年7月に文献検索を更新した。
一般的な試験(研究) 21,600人以上を対象とした33件の試験が見つかり、喫煙者が禁煙するのを助けるさまざまな報酬スキームが試されていた。精神保健クリニックの喫煙者の報告が2件、プライマリケアクリニックからの報告が2件、頭頸部癌治療クリニックからの報告が2件、単科大や総合大学からの報告が2件、タイの村での研究1件が含まれた。24の研究が米国で実施されたものであった。全ての研究は、少なくとも対象者を半年間は観察していた。禁煙の状況調査は、呼吸や体液を検査して行われていた。報酬は、現金の支払い、クーポン、または研究に参加した人が入金したお金の返還であった。
妊婦を対象とした試験(研究) 妊婦を対象とした研究を別途確認した。10件の試験が見つかり、9件は米国にて、1件は英国にて実施され、2571人の喫煙中の妊婦が研究対象であった。報酬は、禁煙し続けた期間に応じてクーポンを増額したというものもあった。
主な結果
一般的な試験(研究):試験開始から6ヶ月以上の観察後、報酬を受け取った人は対照群よりも禁煙に成功する傾向があった。禁煙は、インセンティブ(報酬)の支払いが終了した後にも継続した。支払われた報酬の総額によって研究結果は様々であった。より多い金額(700米ドル以上)を支払う試験(研究)と比較して、少額(米ドル100米ドル未満)を支払う試験との間に顕著な違いはなかった。
妊婦を対象とした試験(研究) 9件の試験のデータを統合すると、報酬を与えた群の女性は、妊娠の終わりと出産後の両方で、対照群の女性よりも禁煙できる可能性が高いことが示された。
研究の質
一部の研究では、質を評価するための充分なデータが示されていなかった。最も質の低い研究を除外してデータを分析しても結果は変わらなかった。主たる結果の確実性は高い。妊婦を対象とした研究は一部の研究の質が低く、結果の確実性は中等度(moderate)であった。
《実施組織》星佳芳 翻訳、清原康介 監訳 [2019.09.01] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどにお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD004307》