抗菌薬による下痢とは?
抗菌薬による下痢(AAD)は、抗菌薬が腸管内の「善玉菌」と「悪玉菌」の自然な細菌バランスを乱し、有害細菌が通常の数を超えて増殖することによって生じる。AADの症状には、水様便の頻発や急激な腹痛などがある。
プロバイオティクスとは?
プロバイオティクスとは有益と考えられる細菌や酵母で、栄養補助食品やヨーグルトなどに含まれる。プロバイオティクスは腸管内の自然な細菌バランスを回復させる可能性がある。
研究者が調べたこと
研究者は、プロバイオティクスが抗菌薬を投与された小児のAADを予防するのか、有害性(副作用)はあるのかについて調べた。2018年3月28日までの医学文献を幅広く検索した。
研究でわかったこと
33件の研究についてレビューし、入手した最良のエビデンスを記載する。研究では6352人の小児(日齢3~17歳)を対象とし、AADを予防するためにプロバイオティクスと抗菌薬を併用した。参加者はプロバイオティクス群(乳酸菌属、ビフィズス菌属、ストレプトコッカス属、またはサッカロミセス・ブラウディの単独使用または併用)、とプラセボ群(プロバイオティクスを含まない錠剤を使用)、AADを予防すると考えられる他の治療群(ジオスメクタイト、または乳児用調製粉乳)、または無治療群に分けられていた。研究は5日~12週間の短期的なものであった。解析により、プロバイオティクスはAADの予防に有効であることが示された。プロバイオティクス群のAADの発症率は8%(259人/3232人)で、対照群の19%(598人/3120人)に比べ、中等度の減少(11%)を示した。プロバイオティクスは治療される9例に1例の下痢症状を予防できる。さらに、エビデンスはより高用量のプロバイオティクス(一日あたり50億コロニー形成単位以上)でAADの発症率を低下できることを示している。高用量プロバイオティクス群のAADの発症率は8%(162人/2029人)で、対照群の23%(462人/2009人)に比べ、中程度から大きな減少(15%)を示した。プロバイオティクスは忍容性が高く、まれにしか軽度な副作用(例えば、発疹、嘔気、ガス、鼓腸、腹部膨満、便秘など)を起こさなかった。エビデンスは、プロバイオティクスが下痢の持続時間も中程度(ほぼ1日)短くする効果も示唆した。さまざまなプロバイオティクスの評価では、50~400億コロニー形成単位/日のラクトバチルス・ラムノーサス(訳注:ラクトバチルス乳酸菌)またはサッカロミセス・ブラウディ が、抗菌薬を投与された小児のAAD予防に最も適切であると考えられる。AADの予防に対する他のプロバイオティクスの有効性と安全性について結論を出すには時期尚早である。プロバイオティクスによる重篤な副作用は研究に参加した健常児では認められなかった。しかし、このレビューに含まれていない観察研究で、中心静脈カテーテル(薬の静脈内投与に用いる柔軟なチューブ)の留置や細菌/真菌移行(細菌が消化管から体の他の部位へ移動すること)による疾患など、リスク因子がある衰弱の激しい小児や免疫不全の小児での重篤な副作用が認められた。
《実施組織》小林絵里子 井上円加 翻訳 [020.04.04]
なお、CD004827.pub4は、厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.2.25]が翻訳した。
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