脊髄性筋萎縮症Ⅱ型およびⅢ型に対する薬物

本レビューの目的

本コクランレビューは、脊髄性筋萎縮症(SMA)のII型およびIII型に対する薬剤の効果を、治療開始から1年以内の障害、筋力、立位・歩行能力、QOL、死亡または人工呼吸器の使用までの時間の観点から検討することを目的とした。また、介入期間中における治療の有害事象を明らかにしたいと考えた。コクランレビューの著者は、この疑問に答えるために関連する研究を収集し、10件の研究を特定した。

要点

ヌシネルセンを髄腔内(脊椎内)注射で投与すると、SMAの障害が改善すると考えられている。

終了している1件の公開されている試験から得られたエビデンスに基づいて、クレアチン、フェニル酪酸、ガバペンチン、ヒドロキシ尿素、バルプロ酸、およびバルプロ酸とアセチル-L-カルニチンとの併用療法は、SMA II型およびIII型の運動機能(筋肉の動きおよび作用)に臨床的に重要な影響を与えないと考えられる。

オレソキシムと皮下ソマトトロピンはSMAの運動機能にはほとんど影響を与えない、または全く影響がないかもしれないが、エビデンスの信頼性は非常に低かった。チロトロピン放出ホルモン(TRH)を静脈内(静脈内)に投与した1件の試験では、運動機能は測定されず、エビデンスの信頼性は非常に低かった。どの研究も、研究デザインや研究の実施に制限があり、結果に影響を与える可能性がある。

本レビューからわかったこと

本レビューは、SMAII型およびIII型の薬物治療に関するレビューである。SMAの症状は、小児期や思春期に初めて現れる。主な特徴としては、進行性の筋力低下が挙げられる。SMAⅡ型の小児は、介助なしでは歩くことができない。また、彼らは大抵、思春期かそれ以降にも存命するが、寿命が短い。SMAⅡ型の発症年齢は6ヶ月から18ヶ月である。SMAⅢ型の小児は自立して歩くことができ、ある時点で歩行能力を失うことはあるが、通常の寿命がある。SMAⅢ型の発症年齢は18ヶ月以降である。

本レビューの主な結果

717人の参加者を含む10件の試験を特定した。すべての試験は、不活性物質(プラセボ)の薬剤または偽処置の実施(見せかけ)と比較した。経口(口から)クレアチン(55名)、経口ガバペンチン(84名)、経口フェニル酪酸塩(107名)、経口ヒドロキシ尿素(57名)、髄腔内投与ヌシネルセン(126名)、経口オレソキシム(165名)が検討された。皮下(皮膚の下に)ソマトトロピン(20名)、TRH静注(9名)、経口バルプロ酸(33名)、または経口バルプロ酸とアセチル-L-カルニチン(ALC)との併用療法(61名)が調査対象となった。治療期間は3ヶ月から24ヶ月までであった。

ヌシネルセンは、偽処置の実施と比較して、SMAⅡ型患者の運動機能に有益な効果を示した。SMA II/III型では、クレアチン、ガバペンチン、ヒドロキシ尿素、フェニル酪酸、バルプロ酸、またはバルプロ酸とALCとの併用療法では、運動機能に対する有益な効果はおそらく認められない。オレソソキシムとソマトトロピンは運動機能に影響を与えない可能性がある。小規模なTRH試験では、運動機能の評価は行われず、その他の結果についての信頼性のエビデンスは得られなかった。どの研究も、結果に影響を与える可能性のある研究デザインや研究の実施に制限があることが分かった。8つの研究は、製薬会社から(一部)資金提供を受け、治験薬を供給する、またはそれ以外の金銭的支援が行われていた。ヌシネルセンとオレソキシムを調査した2つの試験では、製薬会社がデータ解析と報告に関与していた。

4-アミノピリジン、ALC、CK-2121707ヒドロキシ尿素、ピリドスチグミン、リルゾール、RO6885247/RG7800、サルブタモール、バルプロ酸の9つの臨床試験が終了しているが、本レビューを行った時点では結果待ちとなっている。

本レビューの更新状況

エビデンスは2018年10月現在のものである。

訳注: 

《実施組織》 冨成麻帆、堀本佳誉 翻訳[2020.1.6]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD006282.pub5》

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