背景
婦人科系(子宮体部・子宮頸部・腟)の癌や肛門直腸癌に対する骨盤放射線治療は、腟を傷つける可能性がある。腟が縮んで狭くなったり、両端が癒合することもある。このリスクを軽減したり予防するために、放射線治療後に定期的に腟を拡張するように勧めることが定着してきた。腟拡張とは、週に3回程度、腟内に陰茎のような形をした器具(ダイレーター)を5分程度挿入して回転させて腟壁を伸ばすことである。
レビューの論点
この更新されたレビューでは、骨盤放射線治療後の腟拡張を支持するエビデンスがあるかどうかを確認するために、すべての文献の再評価と、このトピックに関する利用可能なすべてのデータの検索を行った。
主な結果
放射線治療後に腟の長さを維持したい女性は、腟拡張を考慮する必要がある。観察研究による限られたデータによると、放射線治療が終了してから定期的に腟拡張を行うことで、腟が狭くなるリスクを少し減らせるかもしれない。放射線治療中の腟拡張療法を支持するエビデンスはない。また、放射線治療から年月が経ってからの腟拡張でも、腟の長さを回復するのに役立つかもしれないと示唆する症例報告や症例集積がある。
エビデンスの質
腟拡張療法を評価するための質の高いエビデンスは、ランダム化比較試験という手法では今のところ得られていないし、今後も決して得られないかもしれない。利用可能な研究は、証明することはできないものの、腟拡張が有効であることを示唆している。ただし、これは放射線治療が終了した後にのみ適用される。放射線治療後の腟拡張と腟狭窄の減少との間には関連があるが、これは拡張による効果を証明するものではない。腟拡張と腟狭窄の減少との関連は、腟拡張の効果によるものかもしれないし、腟狭窄がある女性(または狭窄していると自己申告した女性)は拡張器(ダイレーター)を使用できない可能性が高いからかもしれない。
《実施組織》杉山伸子 内藤未帆 翻訳[2020.07.30]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD007291.pub3》