本ビューの目的
このコクランレビューの目的は、機能性腹痛障害(FAPD)を有する小児・青年の症状を抗うつ薬で改善できるかどうかを調べることであった。この疑問に答えるために、3つの研究から合計223人の子どもと青年のデータを収集し、分析した。
要点
抗うつ薬がFAPDの小児・青年の症状を改善できるかどうかという疑問は、いまだに答えが出ていない。プラセボ(ダミー治療)と比較して、重篤な有害事象は認められなかった。研究の数も少なく、参加者の数も少ないため、より多くの研究が必要ということになる。
本レビューからわかったこと
FAPDは小児期や思春期に多く見られる。ほとんどの場合、痛みの原因となる医学的な理由が見つからないことが多い。FAPDの種類には様々な薬物治療のアプローチがある。抗うつ薬は、成人のFAPD患者を対象としたいくつかの研究で有効であることが示されている。そのため、同じような訴えを持つ小児や青年には、抗うつ薬で治療することもある。
本レビューの主な結果は何か?
抗うつ薬とプラセボ(ダミー治療)を比較したランダム化比較試験(RCT:人々を無作為に2つ以上の治療群のいずれかに配置する臨床試験)を検索した。
アミトリプチリン(AMI)を使用した2件とシタロプラムを使用した1件から成る、合計223人の若年者を対象とした合計3件の研究が含まれていた。
1.抗うつ薬を服用しているときに治療に成功した人の数がプラセボと比較して差があるかどうかは不明である。
2.抗うつ薬を服用しているときに、プラセボと比較して有害事象により治療を離脱する人の数に差があるかどうかは不明である。
結論
抗うつ薬でFAPDの子供や思春期の症状が改善されるかどうかは不明である。これは、研究の参加者が非常に少なく、信頼性の高い手法を用いた研究が行われていなかったためである。これらの研究で示されたエビデンスから、この問題に対する抗うつ薬の有効性について確かな結論を出すことはできない;より多くの参加者を集めたより計画的な研究が必要である。
本レビューの更新状況
このレビューは2020年2月現在のものである。
《実施組織》阪野正大、冨成麻帆 翻訳[2021.03.09]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD008013.pub3》