分娩中における女性の疼痛の感じ方は、大きく異なる。ほとんど疼痛を感じない女性もいれば、非常に苦痛と感じる女性もいる。分娩中の女性の体勢、可動性、恐怖や不安、または逆に自信は、疼痛の感じ方に影響すると考えられる。薬剤を用いた介入や薬剤以外の介入がいくつかあり、本レビューでは、分娩中の疼痛を低減させるために行った異なる介入のシステマティック・レビューを18件評価した。そのうち、15件がコクラン・レビューである。
薬剤以外の介入に関するエビデンスの大半は、わずか1〜2試験に基づいていたため、その所見の信頼性は低い。しかし、水浴、リラクゼーション、鍼やマッサージは疼痛を緩和させ、疼痛緩和による満足度も良好であった。水浴およびリラクゼーションは、出産に伴う満足度も良好であった。リラクゼーションおよび鍼によって、鉗子の使用頻度が減少し、鍼によって、帝王切開の数が減少した。催眠術、バイオフィードバック、生理食塩水注入、アロマセラピー、TENSが分娩中の疼痛緩和に有効かどうかを判断するには、エビデンスが不十分である。
全般的に、薬剤を用いた介入の試験の方が多かった。亜鉛化窒素(エントノックス®)吸入は疼痛を緩和させたが、だるさや悪心を感じたり、気分が悪くなったりする女性もいた。非オピオイド系薬剤(鎮静剤など)は疼痛を緩和させ、プラセボや治療なしと比較して疼痛緩和に伴う満足度は高くなる場合もあったが、疼痛緩和に伴う満足度はオピオイドよりも低かった。硬膜外麻酔は疼痛を緩和させるが、鉗子を必要とする出産の数、低血圧、運動ブロック(足の動きを阻害する)、発熱および尿貯留のリスクを増加させる。脊髄硬膜外麻酔の併用は、疼痛緩和を促進させるが、硬膜外麻酔のみの場合よりも、そう痒を伴うことが多い。ただし、尿閉が問題となる可能性は低かった。局所麻酔剤による神経ブロックは満足度の高いものであるが、目眩、発汗、ひりひり感などの副作用や乳児の心拍数低下を引き起こす。出産前のオピオイド投与(ペチジンや関連薬の注入)は、硬膜外麻酔よりも有効性が低いが、出産中の疼痛緩和のためのその他の介入よりも有効性が高いかどうかを判断するエビデンスは不十分である。
全般的に、出産中に最も役立つと女性が感じる疼痛管理法であれば、女性が自由に選択するべきである。薬剤以外の疼痛管理法を選択した女性は、必要に応じて、薬剤を用いた介入に自由に移行するべきである。女性は妊娠中、疼痛管理のさまざまな方法について、自分自身と胎児への有益性と考えられる有害作用を知らされるべきである。疼痛強度などのアウトカムの評価方法について、試験ごとにかなりばらつきがみられ、また、いくつかの重要なアウトカムはほとんどまたはまったく検討されていなかった(例えば、分娩中のコントロール状態、授乳、母親と乳児の意思疎通、費用、乳児のアウトカム)。分娩中の疼痛管理に対する薬剤以外の介入について、さらなる研究が必要である。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.11.24] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 【CD009234.pub2】