分娩・出産中の疼痛管理に対する催眠

論点

分娩中の女性が経験する疼痛は、さまざまかつ複雑である。催眠などの技法が、分娩中の疼痛に女性が対処する上で役立つ方法として提案されている。催眠は、白昼夢のような覚醒意識のことを意味し、内面に意識を集中させ、指示に反応させるようにする。指示は、言語や非言語によるコミュニケーションであり、意識(陣痛時などの)、気分や態度に影響を与える可能性がある。出産中、さまざまな方法で催眠を用いる場合がある。例えば、疼痛から気分を逸らす方法として、リラクゼーションを促進することや気分を変えること、外傷や障害に伴うことの多い疼痛や苦痛の経験よりも赤ちゃんの誕生に近づくための方法として陣痛を認識することなどが挙げられる。分娩中に施行者が女性に催眠をかけることができ、また、分娩中に行うため、個人で妊娠中に自己催眠を学習することもできる。妊娠中における催眠の行い方に関する訓練は、催眠暗示の音声録音によって補完されることがある。

なぜ重要であるか?

出産は、女性の人生において身体的、感情的および社会的に重大な出来事である。分娩中の疼痛の経験や管理は、多くの女性にとって重要な問題である。

どのようなエビデンスが得られたか?

催眠群または対照群(標準的ケア、リラクゼーション訓練または補助的カウンセリング)にランダム化された2954名の女性を対象とした9試験を選択した。8試験では、女性は分娩中に行うため、妊娠中に自己催眠の訓練を受けた。1試験では、催眠療法士が女性の分娩中に立ち会った。

正常分娩の数、疼痛緩和の方法に対する女性の満足度、分娩対処感覚という観点で、催眠群と対照群との間に明確な差はみられなかった。しかし、催眠群の女性の方が、分娩中の鎮痛薬の使用頻度が少なかった。硬膜外麻酔は、両群間で差はなかった。これらのアウトカムのエビデンスはすべて、低い質であった。試験ではその他のさまざまなアウトカムを評価していたが、一貫した差はみられなかった。

意味するもの

催眠は、分娩中の鎮痛剤の全般的な使用頻度を減少させる可能性があるが、硬膜外麻酔の使用頻度は減少しないと考えられる。催眠を行った女性では、正常な経腟分娩となる可能性が低くなる。催眠が、分娩中の疼痛緩和について女性の満足度を高めるのに役立つかどうか、分娩対処感覚を改善するかどうか判断するには、現在十分なエビデンスはない。今後、質の高い研究が必要であり、疼痛緩和の女性の満足度や分娩対処感覚の評価を含めるべきである。分娩・出産中の疼痛に対する催眠の影響に関する我々の結論は、今後の質の高い研究に伴って変わるであろう。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.11.24] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 【CD009356.pub3】

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