職場のいじめを予防できる方法はあるのか。

背景

職場のいじめは、働く人々の精神衛生を損なう可能性がある。また、彼らが働く組織にとっても有害でありうる。職場のいじめに関する研究は数多くみられる。しかし、多くの研究は、そもそもいじめが起こらないようにすることより、いじめが起こったときにどのように管理するかに注目している。いじめに遭った人々は、多くがいじめに立ち向かうことより仕事を辞めることを選択する。いじめを予防するために職場がとる措置が有効かどうかを知ることは重要である。

レビューの論点

職場におけるいじめを予防するためのさまざまな方法のメリットは何か。

研究結果

4116人を対象とした5つの研究を組み込んだ。指標は、いじめの被害者あるいは加害者になったこと、および長期欠勤などのいじめがもたらした結果である。2つの研究は組織レベル、2つの研究は個人レベル、残りの1つは複数のレベルで介入がなされていた。社会や政策レベルによる介入について研究されたものはなかった。

組織レベルでの介入

2つの研究によると、組織レベルでの介入によって、礼儀正しさが増し、いじめに反対する考え方がおよそ5%増えた。これらの研究のうち1つでは、同僚や上司の無礼な態度が減ったことも示された。また、平均欠勤時間が1ヶ月あたり3分の1日以上減少した。

個人レベルでの介入

感情を表出する作文を46人の従業員に課したところ、いじめの量が減ったことが示された。学習障害のある60人の従業員に対して認知行動的な教育介入を行ったが、いじめに関する有意な変化は認められなかった。

複数レベルでの介入

教育と政策を組み合わせた介入を5つの組織を対象に行ったが、いじめに関する有意な変化は認められなかった。

要点

本レビューは、組織的あるいは個人に対する介入が職場におけるいじめを予防するかもしれないことを示している。しかしながら、エビデンスの質は非常に低い。いじめを予防するためのあらゆる介入について、その効果を評価するよりよい手段を用いた研究が必要である。

訳注: 

《実施組織》杉山伸子 増澤祐子 翻訳[2018.10.04] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。  《CD009778》

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