急性痛風発作に対する非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の効果

急性痛風発作とは何か、NSAIDsとは何か?

痛風は、尿酸一ナトリウム結晶が関節の内部またはその周辺に沈着したために起こり、通常、自然に治癒する急性関節炎のエピソード(発作)として現れる。

NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は痛みと炎症を抑える薬だが、胃腸の潰瘍や出血のリスクを高める恐れがある。シクロオキシゲナーゼ(COX)‐2選択的阻害薬(COXIBs)はNSAIDsの一種だが、胃潰瘍を起こしにくい。

研究の特徴

本レビューは、2014年に初めて公表され、2020年8月28日に更新されたコクラン・レビューのアップデート版で、28件の試験(参加者3,406人)の結果を反映している。参加者の大半(69%から100%)は男性で、年齢は44~66歳、急性痛風発作の持続時間は48時間未満だった。

これら試験のうち、1件(参加者30人)はプラセボ(偽薬)とNSAIDを、13件(参加者518人)は1つのNSAIDと別のNSAIDを、6件(参加者1,244人)はNSAIDsとCOXIBsを、5件(参加者772人)はグルココルチコイドとNSAIDsを、1件(参加者225人)はインターロイキン‐1阻害薬とNSAIDsを、1件(参加者163人)は鍼治療と赤外線照射を併用した場合とNSAIDsを、そして1件(参加者399人)はコルヒチンとNSAIDsを比較したものである。以下に、基本となるNSAIDsとプラセボとの比較について、主な結果を示す。

主な結果

NSAIDとプラセボとの比較

24時間後に痛みが50%以上緩和

NSAIDsを服用した群では、痛みの50%以上の緩和が報告されたのは、プラセボを投与された群と比べて100人あたり47人多かった。

‐NSAIDsを服用した群では、100人あたり73人で痛みの50%以上の緩和が報告された。

‐プラセボを服用した群では、100人あたり26人で痛みの50%以上の緩和が報告された。

24時間後に腫れが50%以上軽減

NSAIDsを服用した群では、腫れの50%以上の軽減が報告されたのは、プラセボを投与された群と比べて100人あたり6人多かった。

‐NSAIDsを服用した群では、100人あたり86人で腫れの50%以上の軽減が報告された。

‐プラセボを服用した群では、100人あたり80人で腫れの50%以上の軽減が報告された。

24時間後の関節機能改善

NSAIDsを服用した群では、関節機能改善が報告されたのは、プラセボを投与された群と比べて100人あたり20人多かった。

‐NSAIDsを服用した群では、100人あたり27人で関節機能改善が報告された。

‐プラセボを服用した群では、100人あたり7人で関節機能改善が報告された。

副作用

NSAIDsを服用した群では、副作用が報告されたのは、プラセボを投与された群と比べて100人あたり10人少なかった。

- NSAIDsを服用した100人あたり3人に副作用があった。

- プラセボを服用した100人あたり13人に副作用があった。

副作用ゆえの服薬の中止はなかった。

エビデンス(科学的根拠)の質

1件の研究から得られた確実性の低いエビデンスが、NSAIDsはプラセボと比べて24時間後の痛みを緩和する可能性が高いことを示唆している。

中等度の確実性のエビデンスが、NSAIDsの痛みと炎症を抑える効果はCOXIBsと恐らく同等だが、副作用が多いこと、またNSAIDsは痛みに対しては恐らくグルココルチコイドと同等に有効だが、腫れに対する有効性は劣り、副作用も多いことを示している。NSAIDsとリロナセプト(インターロイキン‐1阻害薬)、またNSAIDsと鍼治療、さらに1つのNSAIDと別のNSAIDの比較については、それぞれ単一の試験に基づく確実性の低いエビデンスしか入手できなかったばかりか、試験にはもはや使用されなくなったNSAIDsも含まれていた。

訳注: 

《実施組織》 橋本早苗 翻訳、井上円加 監訳[2022.2.5]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD010120.pub3》

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