レビューの論点
心臓や血管に問題がある高血圧の人に対して標準的な目標血圧より低い目標血圧の方がよいのかどうか評価した。
背景
心臓や血管(血管や循環器系)に問題を抱える人たちの多くは高血圧でもある。複数の臨床ガイドラインでは心臓や血管に問題がある人に対しては、そうでない人よりも低い目標血圧に設定する(収縮期血圧135mmHg/拡張期血圧85mmHg以下)ことを推奨している(通常の目標血圧は収縮期血圧140~160mmHg、拡張期血圧90~100mmHg)。低い目標血圧が健康上の全体的な利益につながっているかは不明である。
検索期間
2019年11月までのエビデンスを検索した。
研究の特徴
今回の更新レビューでは、1年から4.7年まで追跡調査された9484人の参加者を含む6件の試験を対象とした。低い目標血圧と通常の目標血圧との差を見つけるため、死亡者数と深刻な副作用(入院に至る程度)の数についてデータを分析した。
主要な結果
低い目標血圧は通常の目標血圧と比較し、総死亡者数や心臓・血管疾患による死亡者数にはほとんど差がないことが分かった。また、心臓疾患、血管疾患の総数や重篤な被害の総数についてほとんど差がみられないという同様の結果になったが、エビデンスの確実性は低かった。非常に非確実で限定的な情報によると、低い目標血圧のグループでは薬害による脱落が多く、全体的な健康上の有益性がみられないことがわかった。
エビデンスの質
このレビューで確認されたエビデンスでは血圧が高く、心臓・血管に問題がある人に対して通常の目標血圧より低い血圧を目標とすることを支持するものではない。この疑問を検討するためにさらなる新しい試験が必要である。全体的にエビデンスの質はGRADE評価(臨床試験を評価し、レビューやガイドラインの推奨を行うための評価手法)において非常に低いから中等度であった。
《実施組織》久保田純平、小林絵里子 翻訳[2021.08.16]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD010315.pub4》