急性副鼻腔炎患者にシクラメン・エウロパエウムの抽出物は有効か?

レビューの論点

成人と小児の急性副鼻腔炎の回復または改善に対し、シクラメン・エウロパエウムの塊茎から抽出した薬草剤であるシクラメン・エウロパエウムの冷凍、乾燥、そのまま液状の抽出物をスプレー式点鼻薬として投与した場合、偽治療(プラセボ)と比較して効果的か評価した。

背景

急性副鼻腔炎は、鼻近傍の骨空洞が感染で炎症を起こしたとき発症する一般的な疾患である。症状には濃い鼻汁や鼻詰まり、顔面痛、頭痛、発熱、咳嗽などがある。症状は成人の場合最長8週間、小児の場合は最長12週間持続する。ほとんどの場合、急性副鼻腔炎はウイルスによって起こるが、感染が広がると合併症が起きる場合もある。また、急性副鼻腔炎は、多大な費用が掛かる一般的な疾患である。

急性副鼻腔炎の治療にはさまざまな保存療法がある抗生物質が一般に処方されるが、治療ガイドラインでは急性副鼻腔炎の治療に抗生物質を投与するタイミングについて意見が異なる。スプレー式点鼻薬として投与したシクラメン・エウロパエウム抽出物に関する複数の研究では、鼻詰まりの軽減に効果があるかもしれないことを示唆している。

検索期間

エビデンスは2018年1月18日現在のものである。

試験の特性

急性副鼻腔炎患者の成人147例が参加した2件の試験を対象とした。参加者は、最長15日間の鼻内噴霧によるシクラメン・エウロパエウムの介入群もしくは非活性物質による対照群に無作為に割り付けられた。

研究の資金源

両試験とも製薬会社から資金提供を受けていた。

主要な結果

症状が最長14日間と30日間までに回復または改善した参加者の割合を調べる必要があったが、エビデンスは見つからなかった。対象の試験は、治療に伴う急性副鼻腔炎症状スコアの変化についてデータを提供していた。1件の試験は、最長7日間の顔面痛の改善を報告していた。いずれの試験も、合併症や学校・仕事を休んだ日数について報告していない。

シクラメン・エウロパエウムの治療を受けた参加者は非活性物質治療群よりも、鼻刺激感やくしゃみ、軽度の鼻出血のような副作用をより多く報告していた。重大な副作用は発生していない。

シクラメン・エウロパエウムが有効か否かについてのエビデンスは見つからなかった。

エビデンスの質

両試験の品質を評価し、エビデンスは唯一評価できるアウトカム、つまり副作用についてのみ中程度の信頼性があると判断した。1件の試験では脱落率が高かったが(60%)、脱落数は試験群の間でバランスが取れていたと記載されている。有害事象については両試験で結果が一致していた。いずれの試験も、アウトカム評価者は参加者がどちらの治療を受けたか知っていたかどうか報告していない。参加数が少なく試験デザインが弱いため、結果について確定はできない。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.12.25] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 【CD011341.pub2】

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