レビューの論点
我々は、何らかの理由で植込み型除細動器の治療を受けた成人に対する運動を中心とした心臓リハビリテーションの利益と害に関するレビューを実施した。
背景
植込み型除細動器は、心臓突然死を予防するための非常に効果的な装置である。これは、抗頻拍ペーシング、高電圧ショック療法、あるいはその両方によってなされる。死亡率の改善に寄与する可能性がある一方で、患者は健康関連QOLに対する負の影響、病院への再入院や医療施設への再入所の増加、生産性や雇用収入の喪失、そして罹患率や死亡率の増加を経験する可能性もある。 運動を中心とした心臓リハビリテーションは、植込み型除細動器を装着した患者に対して有効かもしれない。
研究の特性
我々は、運動を中心とした介入と運動介入のない対照群と比較調査したランダム化比較試験(患者がランダムに介入群と対照群に分けられている試験)を検索した。2004年から2017年までの間に出版された8つの試験が同定され、その参加者は計1730名であった。2つの試験では資金についての報告が存在せず、一つの試験は産業界からの資金提供を受けていたことを報告した。 本エビデンスは2018年8月30日までのものである。
主な結果
このレビューでは、対照群と運動介入とを比較した場合の、死亡、有害な副作用、あるいは抗頻拍ペーシングまたはショック療法が持つリスクに対する影響に関するエビデンスは示されなかった。 また、健康関連QOLには差のエビデンスがほとんどあるいは全く認められなかった。 しかし、運動群に有利な運動耐容能の改善が認められた。
エビデンスの質
エビデンスの質は、全てのアウトカムにおいて中等度から非常に低度であった。イベント数は少なく、試験に参加した人々はランダム化されたどちらの群が介入群なのかを知ることが可能であり、結果の報告はいくつかの試験において不完全で、試験ごとに結果は異なっていた。 これらの考慮事項は、レビューの統合された結果に対する我々の信頼は制限された。
結論
植込み型除細動器を装着した成人に対する運動を中心とした心臓リハビリテーションの影響を評価するためには、より適切なパワー(検出力)で適切に実施されたランダム化試験が必要である。
《実施組織》 安福祐一、杉山伸子 翻訳[2019.12.16]
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《CD011828.pub2》