レビューの論点: 早産児(早く生まれた赤ちゃん)は、胃経由で亜鉛を余分に摂取すると、死亡率が低くなり、発育や成長が改善するのだろうか?
背景: 亜鉛は、赤ちゃんが順調に成長し、感染症に対抗するために必要な重要な微量元素である。早産児は、通常であれば妊娠の終盤(訳注:概ね妊娠36週以降)に行われる、臍帯(へその緒)を通じた母親からの多くの重要な栄養素の伝達を受けることができない。そのため、亜鉛の貯蔵量は少ない。早産児の母乳に亜鉛を追加することで、早産児の成長・発達が改善し、早産児に多い合併症による病気が減り、死亡率が下がる可能性がある。
研究特性: 5件の小規模な試験(早産児482名)を対象としたが、いずれも強固な研究デザインであった。進行中の研究が1件あった。この検索結果は2020年2月20日現在の最新情報である。
主要な結果: 入院中に胃から亜鉛の追加投与を受けた早産児は、亜鉛の追加投与を受けなかった早産児に比べて、死亡率が低く、体重も増加し、身長もやや順調に伸びた。慢性的な肺や目の病気、細菌による感染症、腸の病気など、早産児によく見られる問題に対して、亜鉛の追加はおそらくほとんど影響しないだろう。このレビューで対象とした試験では、亜鉛の追加が赤ちゃんの歩行能力、聴力や視力、言語、知能などの後年の発達に及ぼす影響についての情報はなかった。また、亜鉛の追加投与による副作用の兆候は見られなかった。早産児に胃から亜鉛を投与した場合の長期的な発育や成長への影響については、新たに大規模な試験を行う必要がある。
エビデンスの確実性: 早産児に対する亜鉛の追加投与の効果について、含まれる試験から得られたエビデンスは「低~中程度の確実性」と評価された。これは、試験の規模が小さく、いくつかの試験には方法論的な弱点があり、報告された所見がいくつかのアウトカムについて互いに矛盾していたためである。つまり、より大規模な試験による研究を進めることで、既存の知識に重要な貢献をし、結果に対する信頼性を高めることができると考えられる。
《実施組織》小林絵里子、 阪野正大 翻訳[2021.04.06]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CDCD012797.pub2》