本レビューの目的
生活習慣の改善によって、非アルコール性脂肪肝疾患が寿命、健康関連QOL(生活の質)、慢性肝疾患とその合併症、および何らかの有害性を引き起こすかどうかに及ぼす効果が減少するかどうかを明らかにする。
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)とは、大量のアルコール摂取、医薬品の使用歴、C型肝炎ウイルス感染などの疾患、または飢餓状態など肝臓にダメージを与えるような状況に陥ったことのない人の肝臓に脂肪が蓄積する病気である。脂肪肝は、炎症(非アルコール性脂肪性肝炎(NASH))や肝瘢痕化(肝硬変)などの肝障害を引き起こす可能性がある。NAFLDの治療には様々な医学的治療が試みられている。しかし、治療のどれにも効果があるという証拠は今のところはない。生活習慣の改善は、肝障害を軽減する可能性があるが、それが達成されるかどうかは現在のところ不明である。本レビューの著者は、最良の治療法を見つけることを目的として、関連するすべてのランダム化臨床試験を収集し、分析した。
59件のランダム化臨床試験(被験者を2つの治療群のいずれかに無作為に割り付けた試験)が見つかった。データの分析には、一度に2つの治療法しか比較できない、標準的なコクランの手法を用いた。また、複数の治療法を同時に比較することができる、通常「ネットワーク(または間接)メタアナリシス」と呼ばれる高度な技術も使用する予定であった。
文献検索日
2021年2月
本レビューで検討された内容
本レビューでは、性別、年齢(小児を含む)、民族を問わず、NAFLDを発症した全ての人を対象とした。肝移植を受けたことのある人を対象とした試験は除外した。報告時に参加者の平均年齢は、13歳から65歳の範囲であった。参加者には、公衆衛生上の助言に加えて、指導付きの運動や特別な食事、あるいはこれらを組み合わせたもの、または無介入など、さまざまな治療が行われた。死亡、QOL、重篤或いは非重篤な有害事象、重度の肝障害、または重度の肝障害に起因する合併症、肝がん、肝障害による死亡(以下、「臨床アウトカム」)に関するデータを収集し、分析したいと考えた。
本レビューの主な結果
59件の研究には、少数の参加者(3631人)が含まれていた。研究データは少なかった。1942名の参加者を対象とした28件の試験が解析対象となった。試験参加者の追跡期間は、1カ月から24カ月の範囲であった。臨床アウトカムが報告された試験では、追跡期間は2カ月から24カ月であった。バイアス(試験の実施方法による真実からの逸脱)が大きく懸念されなかったのは小規模な2つの試験のみであることから、このレビューの知見にはかなりの不確実性がある。
本レビューから以下が示されている。
- 2~24ヵ月の追跡期間中、死亡などNAFLDに関連する臨床的に重要な転帰はまれであり、肝硬変(肝臓に傷がつくこと)、肝機能低下(肝臓に傷がつくために起こる合併症)、肝移植、肝臓がん、肝臓疾患による死亡など、肝臓に関連する合併症を発症した被験者もいなかった。これは、試験参加者の追跡期間が短すぎたためと思われる。
- エビデンスは、いずれの臨床アウトカムに対する介入の効果についてもかなりの不確実性を示している。
- したがって、NAFLD患者に最良の生活習慣の改善を見出すためには、今後適切にデザインされた無作為化臨床試験が必要である。肝臓関連の合併症は8~28年かけて発症する。したがって、追跡期間が5年から10年未満の試験では、臨床結果の違いが明らかになることは難しいと思われる。また、サンプルサイズもより大きくする必要がある。
《実施組織》 季律、小林絵里子 翻訳[2021.07.14] 《注意》 この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013156.pub2》