本レビューの目的
何らかの栄養補給が、非アルコール性脂肪性肝疾患による寿命、健康関連QOL(生活の質)、慢性肝疾患およびその合併症に対する影響を減少させるかどうか、また栄養補給で何らかの害が生じるかどうかを明らかにすることが目的であった。
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)とは、肝臓にダメージを与えるような既往(大量のアルコール摂取、医薬品の使用、C型肝炎ウイルス感染などの疾患、飢餓状態など)がない人の肝臓に脂肪が蓄積する病気である。脂肪肝は、炎症(非アルコール性脂肪性肝炎(NASH))や肝瘢痕化(肝硬変)などの肝障害を引き起こす可能性がある。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)には様々な医学的治療が試みられている。しかし、現在のところ、どれも効果があるというエビデンスはない。栄養補給は肝障害を減少させる可能性があるが、それが本当かどうかは現在のところ不明である。本レビューは、最良の治療法を見つけるために、関連する全てのランダム化臨床試験を収集し、分析を行った。その結果、202件のランダム化臨床試験(参加者を2つの治療群のいずれかに無作為に割りつける試験)が見つかった。データの分析手法には、一度に2つの治療法しか比較できない、標準的なコクランの方法を用いた。さらに、複数の治療法を同時に比較できる高度な技術(通常、「ネットワーク(または間接)メタアナリシス」といわれる)を用いた。
文献検索日
2021年2月
要点
バイアス(結果や研究対象などの偏り)のリスクが低かったのは19試験のみであった。そのため、このレビューの結果はかなり不確かなものである。検索された研究では、2~28ヶ月の期間にわたって、臨床的に重要な肝障害やその合併症を調査していた。この期間中に、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に関連した臨床的に重要な転帰である死亡や、肝硬変(肝臓に傷がつくこと)、肝機能低下(肝臓に傷がつくことで起こる合併症)、肝移植、肝細胞がん(肝臓がん)、肝臓疾患による死亡など肝臓に関連した合併症の発生は、何の治療もしていなくても稀であった。栄養補給がこれらを減少させたことを示すエビデンスはない。試験の参加者に肝疾患の合併症が少なかった理由としては、これらの試験の追跡期間が短かったことが考えられる(参加者の追跡期間は2~28ヶ月)。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)による肝臓関連の合併症は、8年から28年かけて発症する。したがって、追跡期間が5~10年未満の試験では、臨床的転帰の差を見つけることはできないと考えられる。
レビューで調べたこと
本レビューでは、性別、年齢、民族を問わず、全ての非アルコール性肝疾患の人を対象とした。過去に肝移植を受けた人を対象とした研究は除外した。参加者の平均年齢は、7歳から61歳であった。参加者は、各種ビタミンやその他の栄養補給を含むさまざまな治療を受けた。本レビューでは、死亡、QOL(生活の質)、重篤な有害事象および非重篤な有害事象、重篤な肝障害、重篤な肝障害に起因する合併症、肝がん、肝障害による死亡などのデータ(「臨床アウトカム」)を収集し、分析を行った。
本レビューの主な結果
202件の研究(14,200人の参加者)を対象とした。研究データは少なかった。合計7,732人の参加者を対象とした115件の研究データを分析に使用した。試験参加者の追跡期間は1~28ヶ月(臨床的転帰が報告された試験では2~28ヶ月)であった。レビューにより、以下のことが示された。
- 全ての臨床的転帰に対する介入の効果には、かなりの不確実性がある。
- 今後、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の人に最適な栄養補給(もしあれば)を見つけるためには、より長い追跡期間でデータを収集する、よく計画された試験が必要である。
《実施組織》榛葉有希、堺琴美 翻訳 監訳[2021.11.11]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013157.pub2》