生殖補助医療を受ける不妊症女性の子宮や卵巣に多血小板血漿を注入すると、妊娠しやすくなるか?

要点

- 子宮内への多血小板血漿(PRP)注入が、生児出産(または妊娠継続)、流産、臨床的に確認された妊娠、多胎妊娠、子宮外妊娠という点で、無治療やダミー治療よりも優れているかどうかはわからない。子宮内へのPRP注入は早産のリスクを高める可能性がある。PRPのその他の潜在的な副作用については、十分な情報がない。

- 卵巣へのPRP注入の使用については、十分な情報がない。

- この結果には確信が持てないので、PRPの使用が生殖補助医療によって妊娠しようとする女性に有益で安全かどうかを調査するためには、もっと質の高い研究が必要である。

多血小板血漿とはどのようなもので、女性の妊娠にどのように役立つのか?

多血小板血漿(PRP)とは血小板を多く含む血漿であり、血漿(血液の液体部分)と高濃度の血小板(血栓の原因となる細胞)からできている。治療を受けている人の血液から作られる。PRPには成長因子が含まれており、特に治癒の遅い組織の修復を促進する。専門家の中には、PRPは卵巣刺激(より多くの卵子を排卵させるために行われるホルモン治療)に対する卵巣の反応を良くし、胚の着床に対する子宮内膜の反応を良くすると考える人もいる。このように、PRPは生殖補助医療を受ける女性の妊娠を助けることができるかもしれない。

何を調べようとしたのか?

PRPが無治療、プラセボ(ダミー治療)、あるいは他の治療法よりも改善効果が高いかどうかを知りたかった:

- 出産または妊娠継続(妊娠12週以降に胎児心拍が確認できること)の可能性
- 臨床的妊娠(妊娠7週時に胎児心拍が確認できること)の可能性

また、PRPが以下のリスクに影響するかどうかも知りたかった:

- 流産;
- 痛み、感染、アレルギー反応;
- 多胎妊娠(双子、三つ子など);
- 子宮外妊娠(胚が子宮外に着床すること);
- 胎児発育不全;
- 早産(妊娠37週以前の出産)
- 胎児異常

実施したこと

生殖補助医療を受ける不妊女性を対象に、PRPを無治療、プラセボ、またはその他の治療と比較した研究を検索した。研究結果を比較して要約し、研究方法や研究規模などの要因に基づいて、エビデンスの信頼性を評価した。十分にデザインされた研究の結果に興味があったので、それのみでも分けて分析した。

わかったこと

12件の研究が特定され、参加した女性は1,096人であった。9件の研究が、子宮内へのPRP注入を無治療またはプラセボと比較していた。子宮内へのPRP注入と顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)注入を比較した研究が2件あった。1件の研究では、卵巣へのPRP注入と無治療を比較した。

主要な結果

子宮内へのPRP注入と無治療の比較

この比較では、十分にデザインされた研究は1件しかなかった。PRPが、生児出生率、流産率、臨床妊娠率、子宮外妊娠率において、無治療よりも優れているかどうかを示すエビデンスは不十分であった。この研究によると、無治療で生児出産の可能性が17.4%であれば、PRP注入後の可能性は7%~40%となる。また、無治療で流産のリスクが4%であれば、PRP注入後のリスクは1%~24%となる。

子宮内へのPRP注入が、生児出産(または妊娠継続)、流産、臨床妊娠、多胎妊娠、子宮外妊娠という点で、無治療やダミー治療よりも優れているかどうかはわからない。子宮内へのPRP注入は早産のリスクを高める可能性がある。

治療による好ましくない影響を報告した研究はなかった。

子宮内へのPRP注入と顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)注入の比較

この比較では、どの研究も十分にデザインされたものではなかった。この結果からは子宮内へのPRP注入が、生児出産(または妊娠継続)、流産、臨床妊娠、多胎妊娠、子宮外妊娠という点で、無治療やダミー治療よりも優れているかどうかはわからない。いずれの研究でも流産以外の望ましくない事象は報告されていない。

卵巣へのPRP注入と無治療の比較

この比較を評価した研究は、十分にデザインされたものではなかった。卵巣へのPRP注入が妊娠継続や臨床的妊娠に及ぼす影響については不明である。この研究では、生児出産や望ましくない事象は報告されていなかった。

エビデンスの限界は何か?

以下の理由で、エビデンスに確信を持てない:

- いくつかの研究は特定の集団に焦点を当てたもので、このレビューで設定した臨床疑問はもっと幅広いものだった;
- これらの研究は小規模なものであった;
- ほとんどの研究は十分にデザインされていない;
- 異なる研究の結果が一致しないこともあった。

したがって、得られた結果は慎重に解釈されるべきである。また、この結果を確認するための研究がさらに必要である。

本エビデンスはいつのものか?

2023年1月時点におけるエビデンスである。

訳注: 

《実施組織》 小林絵里子、杉山伸子 翻訳[2024.10.10]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013875.pub2》

Tools
Information