背景
喫煙は、世界中の予防可能な病気や死亡の主な原因である。禁煙は、高齢期においても人々の健康を大いに向上する。さまざまな種類の催眠療法が、禁煙を試みることや、その支援のために用いられている。中には、喫煙欲を弱めたり、禁煙の意思を強めたり、「禁煙プログラム」に集中させる方法がある。禁煙をしたい人に対する催眠療法の効果に関する科学的根拠(エビデンス)のレビューを行った。
研究の特性
催眠療法と禁煙を助ける他の方法(簡単なアドバイス、更にはより徹底した禁煙カウンセリングなど)とを比較した14件の試験を同定した。計1926例を対象とした。試験は少なくとも6カ月継続した。対象とした試験では、比較した治療法が大きく異なっていたため、結果をまとめることは困難だった。2018年7月18日までのエビデンスを検索した。
主要な結果
6件の試験(計957例)の結果をまとめると、同等の時間を費やした場合、催眠療法がカウンセリングなどの行動的介入よりも禁煙を助けるというエビデンスはなかった。2件の試験(269例)の結果をまとめると、催眠療法とより長いカウンセリング・プログラムとに差が認められるというエビデンスもなかった。1件の試験は、催眠療法と無治療を比較し、催眠療法に効果を見出したが、試験の規模は小さく(40例)、実施方法に問題があるため、この研究結果が確実でないことを意味する。ほとんどの試験が、催眠療法の安全性も評価したかどうかについて言及していなかった。5件の試験は、現行の治療法に催眠療法を追加した検証を行い、効果を認めたが、それらの試験はバイアスのリスクが高く、研究ごとの結果に説明がつかない差があった。1件の試験は、催眠療法とリラクゼーションとを比較し、副作用に差はなかった。
エビデンスの確実性
今回のレビューにおいて、情報が不十分であったことと多くの試験でデザインに問題があったことから、エビデンスの確実性は低い~非常に低かった。
従って、催眠療法が他の治療法よりも禁煙を助けるのに優れているとの明らかなエビデンスはない。利益があるとすれば、現在のエビデンスは最大でもわずかであると示唆される。より大規模で質の高い試験が必要である。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2019.09.30]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD001008.pub3》