白内障術に対し、テノン嚢下麻酔の方が点眼麻酔よりも疼痛緩和が良好であった。
白内障手術に対する局所麻酔は、テノン嚢下麻酔または点眼麻酔のいずれかで行うことができる。両手技の利点を示唆する幾つかの研究はあるものの、すべての関連するアウトカムについて両手技を比較しているシステマティックな最近の試みはない。
白内障手術中の疼痛緩和について、点眼麻酔(前房内局所麻酔を追加するまたは追加しない)とテノン嚢下麻酔の有効性を比較する。
Cochrane Central Register of Controlled Trials(コクラン・ライブラリ、2006年第2号)、MEDLINE(1990年~2006年7月)、EMBASE(1990年~2006年7月)および論文の参照文献リストを検索した。言語および発表状態に制限は設けなかった。
白内障手術に対するテノン嚢下麻酔と点眼麻酔を比較しているすべてのランダム化研究または準ランダム化研究を含めた。
2名のレビューアが独自に試験の質を評価し、データを抽出した。その後追加された情報について研究著者に問い合わせた。また、試験から有害作用の情報も収集した。
患者617例の手術眼742眼を対象とした7件の研究について調べた。5件の研究は片眼手術の対になっていないデータを用いていた。2件の研究は両眼手術の対になったデータを用いていた。手術手技は、5件では透明角膜切開、2件では強膜トンネルであった。研究の全体的な質は高くなかった。1件の試験は三重盲検(治療群について患者、術者、評価担当者を盲検化)、他の3件は単盲検であった。割りつけの隠蔽化およびランダム化の方法は、2件の研究においてのみ記載されていた。3件の対になっていない研究では、テノン嚢下麻酔の方が点眼麻酔よりも術中の疼痛緩和が優れていることが示されていた(プールした重み付け平均差(固定)1.28、95% CI 0.83~1.72)。疼痛スコアの差は、統計学的に有意であっても、臨床的には必ずしも意味はない。程度の差は大きくなく、視覚的アナログ尺度の低値側に偏っているが、点眼麻酔群の方が疼痛が強いと報告している点で研究は終始一貫している。このことは、疼痛スコアの平均が点眼麻酔群で1.13(SD 1.57)であったのに対し、テノン嚢下麻酔群では0.57(SD 1.28)であったことを示す1件の対になった研究によって裏付けられた(P<0.001)。研究のうち、3件は10点視覚的アナログ尺度を用いており、1件は新規の5点尺度を用いていた。別のアウトカム指標によってさらに裏付けられた。テノン嚢下麻酔によって、より多くの結膜浮腫および結膜下出血が引き起こされたが、これは純粋に審美的な問題であった。より重篤な合併症である後嚢破損および硝子体脱は、点眼麻酔群おいてテノン嚢下麻酔群よりも2倍多く発生した(4.3% 対 2.1%)。