呼吸困難の新生児における非侵襲的高頻度換気法(nHFV)

要点

呼吸困難とは何か?

呼吸困難は、新生児に頻繁に起こる呼吸の問題である。その原因は、在胎期間(出産までに児が子宮内で過ごす期間)によって異なる。予定日より早く生まれた児(早産児)に多い原因は、肺の天然化合物(界面活性剤)の不足で、肺胞が容易に開閉できないことである。妊娠37週(正期産)以降に生まれた児に最も多い原因は、一過性新生児多呼吸(または湿性肺)と呼ばれる疾患で、出生後に肺液の排出が遅れるために呼吸困難や速い呼吸が起こる。呼吸困難のケースは他にもたくさんある。

呼吸困難はどのように治療するのか?

通常の治療には、呼吸補助(人工呼吸)、酸素吸入、界面活性剤(サーファクタント)と呼ばれる薬剤の新生児の気管への直接投与などがある。

呼吸補助は、気管内チューブと呼ばれるチューブを乳児の気管に挿入する方法(侵襲的換気)と、マスクや鼻カニューレを使用する方法(非侵襲的換気)がある。侵襲的人工呼吸は、慢性肺疾患と呼ばれる肺障害のリスク増大と関連している。サーファクタント治療の有無にかかわらず、非侵襲的人工呼吸は、呼吸困難の新生児における機械的人工呼吸の必要性と慢性肺疾患のリスクを減少させる可能性がある。

非侵襲的高頻度換気とは何か?

高頻度換気は、非常に小さな呼吸を非常に速い速度(6~15ヘルツ、毎分360~900回)で行う。高頻度換気は、気管内に一定の陽圧を供給することで、潰れた肺組織が開きやすくなる。高頻度換気は通常、気管内チューブを介して行われる。非侵襲的高頻度換気は、マスクまたは鼻につけたプロングを介して行われる。

なぜ新生児に非侵襲的高頻度換気が重要なのか?

新生児における非侵襲的高頻度換気は、経鼻的持続陽圧呼吸療法(nCPAP)、経鼻的間欠陽圧換気(NPPV)、加熱加湿高流量鼻カニューレ療法(HFNC)などの鼻プロングを使用する他の形態の非侵襲的換気と比較すると、比較的新しい非侵襲的換気の方法である。経鼻的持続陽圧呼吸療法は、乳児の気道に一定の圧力を与える。経鼻的間欠陽圧換気は、通常、乳児の正常な呼吸数(1分間に30~60回)で、換気を行う。高流量鼻カニューレは、加温・加湿した空気または酸素を毎分3~8リットルの流量で供給する。

何を調べようとしたのか?

呼吸窮迫症候群、またはそのリスクのある正期産児および未熟児において、鼻プロングによる他の形態の非侵襲的換気(経鼻的持続陽圧呼吸療法、経鼻的間欠陽圧換気、加熱加湿高流量鼻カニューレ療法など)および気管内チューブによる侵襲的換気と比較して、非侵襲的高頻度換気が生存率を改善し、気管内チューブを必要とする割合やその他の転帰を減少させるかどうかを調べたいと考えた。また、非侵襲的高頻度換気の使用が、望ましくない影響を及ぼすかどうかも調べたかった。

実施したこと

呼吸窮迫症候群を有するかそのリスクのある早産児において、非侵襲的高頻度換気を経鼻的持続陽圧呼吸療法、経鼻的間欠陽圧換気、加熱加湿高流量鼻カニューレ療法、気管内チューブによる侵襲的換気と比較した研究を検索した。研究結果を比較、要約し、研究方法や研究規模などに基づくエビデンスに対する信頼性を評価した。

わかったこと

早産児5,068人と正期産児46人を対象に、この治療法を検討した33件の研究を同定した。呼吸困難のある早産児の場合、最初に非侵襲的高頻度換気を使用することで、経鼻的持続陽圧呼吸療法を使用するよりも、挿管や人工呼吸のリスクをおそらく減らすことができる。挿管して界面活性剤投与後に抜管が計画されている早産児の場合、非侵襲的高頻度換気の使用は、経鼻的持続陽圧呼吸療法や経鼻的間欠陽圧換気と比較して、おそらく気管内再挿管のリスクを減少させる。経鼻的持続陽圧換気と比較して、非侵襲的高頻度換気の使用は、おそらく慢性肺疾患のリスクも軽減する。死亡やその他の新生児の転帰に差は認められなかった。長期的な転帰は報告されていないか、小規模な試験でのみ報告されている。新生児に最適な呼吸補助の方法を決定するために、初期の呼吸補助と計画的抜管の際における、非侵襲的高頻度換気と経鼻的間欠的陽圧換気を比較する大規模試験が必要である。

これらの試験から得られた有望な結果を考慮すると、呼吸窮迫症候群のある、あるいはその危険性のある超早産児に対して、特定の臨床状況において非侵襲的高頻度換気を使用することは妥当と考えられる。

エビデンスの限界は何か?

初期呼吸補助における、および他の非侵襲的呼吸補助がうまくいかなかった場合における、非侵襲的高頻度換気の役割を決定するために、特に高所得国・地域での大規模試験が必要である。したがって、非侵襲的高頻度換気による最適な換気方法とその設定を明らかにするためには、さらなる研究試験が必要である。

このエビデンスはいつの時点のものか?

エビデンスは2023年4月9日現在のものである。

訳注: 

《実施組織》 小林絵里子、杉山伸子 翻訳[2024.10.10]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD012712.pub2》

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