レビューの論点: 妊娠37週以降に産まれ(正期産)、出生時に健康である赤ちゃんにおいて、母親などとのベッドシェアリング(訳注:同じベッドに寝ること)が母乳育児の期間を延ばすことや授乳の頻度の増加と関連しているかどうかを明らかにすること。
背景: 「ベッドシェアリング」とは、乳幼児が他の人と寝床(ベッド、ソファ、肘掛け椅子など)を共有する寝方の一種である。母乳育児のしやすさ、体温調節(低体温症の回避)、乳幼児と過ごす時間の充実、乳幼児の睡眠補助や興奮した時のあやしやすさ、万一の時の迅速な対応、病気時のケア、愛着形成の促進などがベッドシェアリングを選択する理由と考えられている。しかし、世界中の多くの家庭で、ベッドシェアリングは選択されてはいない。高所得国では、ベッドシェアリングに対して意見が分かれており、特に乳幼児突然死症候群(SIDS)との関係において注目されている。一方、中低所得国では、赤ちゃんと寝床を分けて用意できない多くの人たちにとって、ベッドシェアリングが標準的な習慣となっている。これらの豊かでない社会では、ベッドシェアリングは、授乳期間の延長、乳児の覚醒時間と持続時間の増加、深い眠りにつく時間と持続時間の減少、母親の乳児の状態への気づきの増加などに寄与すると考えられている。
研究特性 2020年7月23日までの研究を検索した。レビューの目的は、ランダム化比較試験(RCT)を含めることであった。ランダム化比較試験とは、参加者が2つ以上の治療群のいずれかに無作為に割り付けられた医学的な研究のことである。生後24時間以内に母親とのベッドシェアリングを開始した(継続期間は生後4週間以上)正期産の新生児を対象としたRCTを対象とする予定にした。ベッドシェアリングをする群としない群を比較することを目的とした。ベッドシェアリングでは、母親と新生児が密接に接触している。生理学的な利点としては、体温調節がうまくいき、低体温のリスクが減ること、母乳育児がうまくいく期間が長くなることなどが考えられる。有害な面には、母親が新生児の上に覆いかぶさってしまうことや枕や布団の使用に伴って起こりうる乳幼児突然死症候群がある。
主な結果: このレビューに含めるために6件の研究を評価した。結果として、次のような理由で、レビューを行うことができなかった。:一次データであるRCTを解析した二次データである(2件)、ベッドシェアリングを研究していない(2件)、RCTではない(1件)、レビューで関心のある評価項目を研究していない(1件)。
エビデンスの確実性: 健康な新生児におけるベッドシェアリングに関するエビデンスの確実性を判断することはできなかった。これは、判断の対象となる研究がなかったためである。健康な新生児におけるベッドシェアリングについて、効力(病院のような管理が行き届いた環境での研究)や有効性(地域や家庭のような現実的な環境で行われた研究)、安全性を直接評価するRCTが必要である。また、高所得国と低・中所得国、特に文化的慣習からベッドシェアリングが一般的な国(例:アジア諸国)の乳幼児を含めるべきである。
《実施組織》 小林絵里子、杉山伸子 翻訳 [2022.08.03]《注意》 この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン日本支部までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD012866.pub2》