このレビューの重要性
有害なアルコールの使用は、世界的な疾病負荷の主な原因の1つである。中低所得国では、有害なアルコールの使用が増加している。しかし、有害なアルコール使用を予防・治療するサービスは限られている。利用可能なサービス不足の一因は、有害なアルコール使用を減らすにはどのような介入アプローチが効果的なのか、また、こうしたアプローチが低資源の環境で実行可能で受け入れられやすいかどうかについての情報が限られていることである。有害なアルコール使用による身体的、心理的、社会的負荷を防ぐためには、アルコールに関連した害を減らすための効果的な介入が利用できることが重要である。
本レビューの目的は何か?
このレビューの目的は、低・中所得国において、心理社会的・薬理学的介入が有害なアルコール使用を減らすことができるかどうかについてのエビデンスをまとめることである。また、治療の安全性を評価し、治療が完了するまでどれだけの人が治療を継続できるかを目指す。
調査でわかったこと
有害なアルコール使用を減らすための介入の効果を評価した66件のランダム化比較試験を特定した。これらの研究のほとんどは心理社会的介入を評価したものであり(52件)、6件は薬理学的介入のみを評価し、8件は薬理学的介入と心理社会的介入を組み合わせて評価したものであった。
対象となった臨床試験の大半は、政府機関から資金提供を受けたものであり(36試験)、次いで複数の公的・民間資金提供者(8試験)または民間財団(5試験)であった。17試験は資金源の報告がなかった。
短時間の心理社会的介入やその他の心理社会的介入が有害なアルコール使用を減らすかどうかは不明である。薬理学的介入と心理社会的介入の併用は、プラセボを併用した心理社会的介入と比較して、有害なアルコール使用を減少させる可能性があるが、エビデンスの確実性は低いと評価されている。有害なアルコール使用に対する薬理学的介入のみの効果を調べた研究は見つからなかった。いずれの介入タイプにおいても、研究条件によって継続率が異なるというエビデンスは見つからなかった。
エビデンスの確実性: 有害なアルコール使用に対する簡易介入およびその他の心理社会的介入の効果に関するエビデンスの確実性は、盲検化の欠如、脱落率が様々であること、およびデータの欠落、選択的な結果報告、異質性の高さ、および患者集団の違いにより、非常に低かった。有害なアルコール使用に対する薬理学的および心理社会的介入の併用効果に関するエビデンスの確実性は、盲検化の欠如、不完全な結果データ、および調査中の薬理学的介入における異質性のために低かった。有害なアルコール使用に対する薬理学的介入のみの効果を評価した研究はなかった。
2021年12月12日時点のエビデンスである。
次のステップは何か?
有害なアルコール使用を減らすための介入に関する今後の研究では、本レビューで述べたいくつかの限界に対処する必要がある。一般化可能性を向上させ、効果的な介入に必要な特徴や条件を理解するためには、研究や文脈を超えて同様の介入を評価する研究が必要である。また、研究対象集団において有効な測定ツールを利用しなければならない。最後に、このレビューで報告された結果の不確実性の高さにつながるバイアスのリスクを減らすために、今後の研究で計画されなければならない。
《実施組織》 阪野正大、伊東真沙美 翻訳[2023.09.20]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013350.pub2》