新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防と管理に役立つ対策について、人々やコミュニティ(地域社会)とどのようにコミュニケーションをとればよいか?

要点

- パンデミック(世界的大流行)の最中、政府やその他の当局は、人々がどのようにすれば安全を保てるかについて、国民に明確に伝える必要がある。このコミュニケーションは信頼に基づき、綿密に計画されたものでなければならない。パンデミックの影響を受ける人々やコミュニティは、コミュニケーションの計画と実施に関与する必要がある。コミュニケーションは、読み書きが困難な人、コミュニティの主要言語以外の言語を話す人、その他の種類の不利益な状況に直面している人などを含め、コミュニティ全体のすべての人に届くものでなければならない。明確なコミュニケーションによって、人々が自分自身の安全を守る対策を実行する力を向上させることができる。

- このレビューでは、パンデミック時のパブリックヘルスコミュニケーション(国民のヘルスコミュニケーション)における最良のアプローチを導くことができる6件のテーマを特定した。これらのテーマは以下の通りである。

1) 国民の信頼を強化し、誤った情報への対抗。

2) コミュニケーションのあり方について、人々が意見を出し合えるようにするため、コミュニティを巻き込んだ双方向のコミュニケーション。

3) 対象は誰なのか、またコミュニティにおけるさまざまな人々のニーズをどのように満たすことができるのかを考慮したパブリックコミュニケーションに対する開発と準備。

4) コミュニティへのメッセージの伝え方とタイミングを含む、パブリックコミュニケーションの特徴。

5) 個人および集団レベルでの行動変容を支援。

6) パブリックヘルスコミュニケーションに対する受容性と反応性の長期にわたる促進と維持。

- このレビューの結果は、パンデミック時のパブリックヘルスコミュニケーションについて、政府やその他の当局が決定を下す際に役立つものである。この知見は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)および将来の公衆衛生上の緊急事態に関連するものである。この調査結果は、さまざまな国やさまざまな緊急事態に適用することができる。

- このレビューを通じて、いくつかの研究上のギャップが見つかった。これらは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって重症化したり死亡したりするリスクが高い人々とのコミュニケーション、低・中所得国でのコミュニケーション、社会的不平等で知られている環境でのコミュニケーションなどである。これらの分野でのさらなる研究を進めることで、パンデミック(世界的大流行)のコミュニケーションに関する知識を深め、実践を改善することができる可能性がある。

物理的な距離の取り方とは?

「物理的距離対策」とは、人と人との物理的接触を減らすことで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のような病気の蔓延を抑える方法を指す。物理的な距離を取る方法としては、接触者の追跡、人ごみの回避、隔離、検疫、学校や職場での感染を減らすための対策などがある。

知りたかったこと

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)や他の類似した病気の蔓延を防ぐために、人々が自分の身を守るための物理的距離を取る方法を理解し、使用するようになるには、どのような方法で一般市民とコミュニケーションをとるのが最も効果的かを調べたいと考えた。また、不利な立場に置かれている人々など、コミュニティ内のの特定のグループにとってより効果的なコミュニケーション方法があるかどうかも調べたかった。

実施したこと

これは2020年に実施されたレビューの更新版である。2020年のレビューには、一次研究(質的および量的)と二次情報源(レビュー研究およびガイドライン)が含まれた。

今回の更新版のための検索では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やその他の感染症の予防および/または制御のための物理的距離の取り方に関するコミュニケーションについて検討したガイドラインやレビュー研究を検索した。2020年のレビューの結果と、含まれた研究およびガイドラインの結果を比較し、要約した。

わかったこと

このレビューには、68件の研究(ガイドライン、レビュー、一次研究[研究者が独自にデータを収集した研究])が含まれている。今回の更新では、当初の2020年のレビューに17件のガイドラインと20件のレビュー(二次研究とみなされる)が追加された。

パンデミック時の物理的距離に関するコミュニケーションの計画と実施に関する6件の主要なテーマを特定した。

これらのテーマは、パンデミックや公衆衛生上の緊急事態におけるコミュニケーションに関する政策や意思決定プロセスに役立つ。これらのテーマは以下の通りである。1)国民の信頼の強化と誤った情報への対抗、2)双方向のコミュニケーション、3)パブリックコミュニケーションの開発と準備、4)パブリックコミュニケーションの特徴、5)個人および集団レベルでの行動変容の支援、6)パブリックヘルスコミュニケーションに対する受容性と反応性の促進と維持。

エビデンスの限界は?

今回の更新では、レビューとガイドラインに焦点を当てた。通常、これらは入手可能な最良のエビデンスであるが、今回の更新では、主に質が低いか中等度と評価された。研究のデザインはそれぞれ異なるため、質の評価はエビデンスの序列(ランキング)として使用するものではない。

このレビューの長所は、主要なテーマと知見が、一次研究、レビュー、ガイドラインを含む多様な情報源から得られたことである。多くの場合、異なる研究手法、母集団、環境で同様の結果が報告されている。この最新レビューから得られた知見もまた、2020年レビューの知見に基づいており、主な知見を追加し、主要なギャップを埋めている。異なる研究手法で同様の結果が得られ、今回の更新で新たな情報が追加されたことで、含まれる研究のほとんどが質が低いか中等度であるにもかかわらず、結果に対する確実性が高まった。しかし、新しいエビデンスの検索が最後に行われたのは2021年であるため、現在ではさらに関連するエビデンスが存在している可能性が高い。

このエビデンスはいつのものか?

エビデンスは2021年8月現在のものである。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、伊東真沙美 翻訳[2024.08.21.]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD015144》

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