要点
- 薬による中絶は、妊娠12週までの妊娠を終了させる安全で効果的な方法である。
- ミフェプリストンとミソプロストールの併用は、これらの薬を単独で使用するよりも効果的である。
- ミソプロストールは、口から飲むよりも腟に入れた方が効果的で、舌の下や頬に入れるよりも不快感がない。
薬による中絶とは?
薬による中絶は、1種類以上の薬を単独で、あるいは組み合わせて用いて、妊娠を終わらせる。最も一般的な薬は、プロスタグランジンやミフェプリストンというホルモン剤である。その他、抗がん剤の一種であるメトトレキサートや、エストロゲンというホルモンの産生を抑えるレトロゾールなどの薬もある。これらの薬は、子宮頸部(子宮の入口)を柔らかくしたり、子宮を収縮させたりして、効果を発揮する。口から飲む、舌の下や頬に入れる、腟に入れるなどの方法がある。病院で看護師や医師が投与することも、女性が自宅で服用することも可能である。
薬による中絶の方法は、大量出血、痛み、吐き気、嘔吐、下痢などの望ましくない影響を引き起こす可能性がある。 中絶の失敗は、頻度は低いが、薬による中絶の重要な合併症である。初期の中絶のための薬は、すでに一部の国で広く利用されており、新しい薬も開発されている。
何を知りたかったのか?
妊娠初期(妊娠12週まで)に完全な中絶を達成するためには、どの薬が最も効果的か、またその投与量や投与方法に差があるかどうかを調べたいと考えた。また、望ましくない(有害な)効果があるかどうかも調べたかった。
このレビューで行ったことは何か?
妊娠12週までに薬による中絶を行う女性に対して、様々な薬、用量、薬の与え方について調査した研究を探した。
研究の特徴
24種類の薬の組み合わせ、投与量、投与方法を調査した99件の研究を対象とした。
主な結果
ミソプロストールを腟に入れることは、口から飲むよりもおそらく中絶を達成するために効果的で、舌の下や舌と頬の間に入れるよりも胃の不快感が少ないかもしれない。ミソプロストール単独とミフェプリストン単独では、ミソプロストールとミフェプリストンを一緒に服用した場合よりも中絶の失敗が多くなる可能性がある。自宅か病院か、ミフェプリストンの投与量、プロスタグランジンの単回投与か反復投与かによって、中絶の成功率にはほとんど差がない可能性がある。しかし、中絶は病院で看護師が行うより、病院で医師が行う方が成功する場合がある。
エビデンスの限界
全体的に、いくつかの理由から、エビデンスの確実性は限定される。ほとんどの研究は、十分な数の被験者を含み、適切な方法で被験者を選択し、特定の治療に割り当てている。しかし、被験者や被験者を治療する医師が、どんな治療を受けたかを知らないようにすることは困難であった。いくつかの研究は、開始前にその目的を公表していないため、研究者が関心を持っていた点すべてを測定し報告しているかどうかを評価することが困難である。ほぼすべての研究は、女性が検診のために戻ってくることができる高所得国で行われた。低所得国での結果が異なっていたか否かはわからない。
このレビューの更新状況
本レビューは、2011年に発表されたレビューのアップデート版である。エビデンスは2021年2月現在のものである。
《実施組織》 阪野正大、杉山伸子 翻訳[2022.06.15]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD002855.pub5》