レビューの論点
多巣性運動ニューロパチー(MMN)患者における静脈内免疫グロブリン(IVIg)および皮下免疫グロブリン(SCIg)の効果に関するエビデンスをレビューした。免疫グロブリンは、血液から精製された特定の標的を持たない抗体の製剤で、通常は静脈内に投与するが(IVIg)、皮下に注入する方法(SCIg)も考えられる。
背景
MMNは、手足の力が弱くなる珍しい病気で、時間の経過とともに悪化する傾向がある。脚よりも腕、特に手の方が多い。MMNの通常の治療法はIVIgである。
研究の特徴
このテーマに関する研究を広く検索したところ、IVIg治療を受けたMMN患者90人を対象とした6つの小規模試験が見つかった。3件の研究には限界があり、残りの研究については完全な評価を可能にする十分な情報がなかった。5件の試験では、IVIgの注入(緩徐注入)とダミーの注入を比較した。残りの試験では、2種類の異なる投与経路を比較した。IVIg輸液とSCIg輸液の比較。その効果は、治療後4週間から12週間の間に測定された。2件の試験では、免疫グロブリンのメーカー従業員が著者として関与していた。これらの研究のうち1件はメーカーがスポンサーとなっており、データに完全にアクセスできる専門家による独立した原稿審査が行われた。
主な結果とエビデンスの確実性
IVIgは、MMN患者の体力を改善する可能性がある。IVIgは障害を改善する可能性もあるが、このエビデンスは確実ではないため、効果を確認または除外するにはさらなる研究が必要である。IVIgでは、ダミーの点滴よりも多くの人が副作用を経験するかどうかのエビデンスは不明である。IVIg治療中の重篤な副作用(肺塞栓症)は1件のみであった。MMN患者のほとんどは、免疫グロブリンの投与を継続する必要がある。なぜなら、免疫グロブリンの投与を中止すると、障害や筋力が悪化するからである。SCIgがIVIgの代替となりうるかどうかについては、より多くのエビデンスが必要である。
エビデンスは2021年4月までのものである。
《実施組織》 阪野正大、冨成麻帆 翻訳 [2022.02.13]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD004429.pub3》