ヘパリンロックは、生理食塩液によるロックと比較して成人における中心静脈カテーテルの閉塞を防止するか?

要点

中心静脈カテーテルの閉塞防止、カテーテルが閉塞するまでの期間の長さ、感染症や死亡、出血などの副作用の発生数について、ヘパリンと生理食塩液(水に塩を溶かした滅菌液)の間に差があるという明確なエビデンスは見つからなかった。不確実性を減らすためには、よりよく設計された大規模な研究が必要である。

なぜこの問題が重要なのか?

中心静脈カテーテルは、医療上の理由で定期的に静脈路を使用する必要がある患者の静脈に一時的に挿入する必要がある管(「ライン」とも呼ばれる)である。これらは心臓につながる大血管に挿入される。カテーテルを使用していない間、次に使用するまでに血栓ができて閉塞してしまわないように、カテーテル内に液体を注入する。この行為をカテーテルをロックする、と言う。カテーテルの交換は医療費を増加させ、治療を遅らせる可能性があり、患者に対してカテーテル関連の有害事象のリスクを増大させる。また、カテーテルが感染して血流感染症を引き起こす可能性もある。ロックに使用する液体は、ヘパリンまたは生理食塩液である。ヘパリンは、抗凝固剤であり、血液の凝固を防ぐために使用される。カテーテルの閉塞を防止する効果が期待できるが、出血やアレルギー反応、血液中の血小板数の低下を引き起こす可能性もある。そのため、閉塞を避けるためには生理食塩液よりもヘパリンが良いのか、それぞれの方法は安全であるのか、といった疑問が提起されている。

本レビューで実施したこと

生理食塩液と比較して、ヘパリンでカテーテルをロックすることが閉塞や感染症のリスク低減に効果的かどうかを評価したランダム化比較試験を検索した。ランダム化比較試験では、患者が受ける治療が無作為に決定されるため、治療の効果について最も信頼できる治療効果が得られる。

本レビューで分かったこと

今回の更新では新規の研究を1件発見した。合計で2,422人を対象とした12件の研究を対象とした。5件の研究はICU患者を、2件の研究はがん患者を、残りの研究は多様な患者(血液透析患者、在宅療養患者など)を対象としていた。生理食塩液によるロックと比較して、ヘパリンでカテーテルをロックすることが閉塞を防ぐと結論づけることはできなかった。ヘパリンと生理食塩液の間で、カテーテルが閉塞するまでの期間や副作用の発生数にほとんどまたは全く差が見られなかった。

エビデンスの確実性

試験のデザインに問題があり、また全体的な結果に有意差がなく、有益あるいは有害の両方の可能性があるため、ヘパリンと生理食塩液を比較した場合の結果の確実性は非常に低いまたは低いものであった。

エビデンスはいつのものか?

本レビューは前回のレビューを更新したものである。本エビデンスは2021年10月20日現在のものである。

訳注: 

《実施組織》今井けい、杉山伸子 翻訳[2023.04.01]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD008462.pub4》

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