小児急性肺炎の治療において、抗菌剤に加えてビタミンDを投与することは有効かつ安全か?

肺炎とは、どのような病気で、どのように治療されているのか?

肺炎は、感染によって肺に炎症(腫れ)が起こる病気である。肺炎の治療には、抗菌剤、酸素マスクからの酸素吸入、およびその他の支持療法が用いられている。ビタミンDは免疫力を高め、過剰な炎症を抑えるので、小児の肺炎からの回復を助けると考えられている。

何が知りたかったのか?

ビタミンDを抗菌剤と一緒に投与することが、小児の肺炎からの回復に役立つかどうかを明らかにしようとした。

何を行ったのか?

肺炎を発症した生後1か月から5歳の小児を対象に、ビタミンDとプラセボ(偽の治療)を比較した研究について検索を行った。研究結果を比較、要約し、研究方法や研究規模などの要素から、エビデンスに対する信頼性を評価した。

研究の特徴

低、中所得国における計1,601人の小児患者が参加した7件の研究が対象となった。5件の研究では、患者は研究参加時、または入院後24時間以内に大量のビタミンDを単回投与されていた。2件の研究では、5日間ビタミンDの投与が行われていた。1件の研究では、ビタミンDの濃度が正常な患者は除外されていた。2件の研究では、小児の肺炎の原因が報告されていた。

主な結果

ビタミンDの投与は、小児患者が肺炎から回復するまでの時間に対し、ほとんど、または全く影響を及ぼさない可能性がある。ビタミンDの投与が、入院期間や死亡数に影響を与えるかどうかは不明である。また、これらの研究では、重大な有害事象は報告されていない。

エビデンスの限界は何か?

小児患者が肺炎からの回復にかかった時間についてのエビデンスには、中程度の信頼性しかない。また、この比較の対象となった患者はすべて低所得地域の小児であったため、この結果は高所得地域の集団には適用できない可能性がある。死亡率に関するエビデンスについては、上記と同様の適用性の問題があり、また有益性と有害性の双方に対応する結果が評価されていたため、信頼性は低い。入院期間に関するエビデンスについては、上記の適用性の問題と、1件の研究において、小児と医療従事者が行われた治療方法を知っていたこと、また、比較が行われた研究間で結果が大きく異なっていたことから、信頼性はほとんどない。

このエビデンスはいつのものか?

2021年12月28日時点のエビデンスである。

訳注: 

《実施組織》小泉悠、小林絵里子 翻訳[2023.02.12]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD011597.pub3》

Tools
Information