中用量の吸入ステロイド薬でコントロール不良な喘息に推奨される治療選択肢

要点

• 中用量の吸入ステロイド薬(ICS)に長時間作用性β2刺激薬(LABA)または長時間作用性抗コリン薬(LAMA)を追加すると、経口ステロイド薬による治療を要する喘息発作が減少する可能性が高い。またICS単独と比較して、良好な症状コントロールのオッズ(達成確率)が増加するが、ICSの用量を2倍にしても、おそらく増加しない。LAMAよりもLABAの方がはるかに多くのデータが見つかった。

• 包含された研究の実施期間は平均わずか6か月であったため、高用量ICSの長期的な副作用について、さらに研究が必要である。ステロイドによる副作用を最小限に抑えるために、ICSは最小有効量で使用することが推奨される。

喘息とは何か、またどのように治療するのか

喘息とは、気道の炎症と狭窄(細く狭くなること)を特徴とする慢性呼吸器疾患であり、喘鳴(ぜんめい)、咳、胸の圧迫感、息切れなどの症状を引き起こす。治療には、発作治療薬(短時間作用性気管支拡張薬など)や必要に応じて発作予防薬(ICSなど)の吸入薬を使用するほか、発作の誘因を避け、健康的な生活習慣を維持することが必要である。

知りたかったこと

この研究では、中用量のICSで喘息を上手くコントロールできていない10代および成人を対象に、喘息コントロールを改善するのに最適な方法を見つけたいと考えた。3種類の治療を比較した。

検討した治療は以下の3つである。

• LABA吸入薬の追加

• LAMA吸入薬の追加

• 現在使用しているICS吸入薬の用量を2倍にする

主な目的は、喘息コントロールの改善にはどの治療が最も有効か、また副作用の面でどの治療が最も安全なのかを調べることにあった。

実施したこと

中用量のICSでコントロール不良な喘息を有する患者計38,276人を対象とした35件の研究からデータを収集して、ネットワークメタアナリシスと呼ばれる特殊な手法を用いて解析を行った。この手法では、複数の吸入薬のグループを同時に比較することができる。中用量のICSにLABAまたはLAMAを追加した場合、ICSの用量を2倍にした場合、中用量のICSを単独で使用した場合とを比較した。

わかったこと

中用量のICSにLABAまたはLAMAを追加すると、経口ステロイド薬による治療を要する喘息発作が減少する可能性が高い。またICS単独と比較して、良好な症状コントロールのオッズが増加するが、ICSの用量を2倍にしても、おそらく増加しない。LAMAよりもLABAの方がはるかに多くのデータが見つかった。

中用量のICSにLABAまたはLAMAを追加したり、ICSの用量を2倍にしても、喘息関連の入院や重篤な副作用は減少しない可能性が高い。ICSにLAMAを追加すると、副作用や治療の中止は減少するかもしれない。しかしながら、ICS/LAMA併用療法は単剤の吸入器が2つ必要なのに対し、ICS/LABA併用療法は吸入器1つで投与が可能である。

エビデンスの限界

包含された研究の実施期間は平均わずか6か月であったため、高用量のICSの長期的な副作用について、さらに研究が必要である。喫煙者やLAMAに副作用歴がある人は、レビューに含まれていないか、ごく少数であったため、この研究結果を適用できないかもしれない。

本レビューの更新状況

本レビューは2022年12月現在のものである。

訳注: 

《実施組織》河村 万紀子、ギボンズ 京子 翻訳[2023.11.02]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013797.pub2》

Tools
Information