エストロゲン療法は閉経後女性の骨盤臓器脱の治療に役立つか?

要点

- 14件の研究がこのレビューの選択基準を満たしたが、最も関心のある比較を扱った研究はなかったため、閉経後女性の骨盤臓器脱に対するエストロゲン療法の効果については不明である。

- 閉経後女性の骨盤臓器脱に対する、エストロゲン療法単独または他の治療法との併用による効果について評価するためには、さらなる研究が必要である。

骨盤臓器脱とは?

骨盤臓器脱とは、女性の子宮、膀胱、直腸が正常な位置から腟の中に下がってしまうことである。この病気はよく見られるもので、少なくとも一度出産経験のある50歳以上の女性の50%が罹患している。子宮摘出術を受けた女性の6%~12%が骨盤臓器脱を経験する。年齢が高く、出産回数が多く、太っている女性は骨盤臓器脱になりやすい。骨盤臓器脱の女性は、腟に「何かが下りてくる」感覚や、性行為時の不快感や排尿障害など、QOL(生活の質)や身体イメージに悪影響を及ぼすその他の症状を有することがある。

知りたかったこと

骨盤臓器脱の治療には、多くの臨床医がエストロゲン療法(ホルモン療法の一種)を処方しており、ペッサリー(腟内に挿入して支える器具)や手術などの他の治療法と併用することもある。しかし、このアプローチの利益は不明である。エストロゲン療法を単独で、あるいは他の治療法と併用することで、閉経後の女性の骨盤臓器脱の症状を改善できるかどうかを調べたいと考えた。

実施したこと

閉経後女性に対するエストロゲン療法の効果を、単独またはペッサリーや手術などの他の治療法との併用で調査した研究を検索した。研究結果を比較、要約し、研究方法や参加者数などの要因から、エビデンスに対する信頼性を評価した。

わかったこと

合計1,002人の女性を対象とした14件の研究が見つかった。10件の研究では、骨盤臓器脱の重症度が異なる女性を対象とした。骨盤臓器脱の部位、出産した子どもの数、子宮摘出術の有無、検討されたエストロゲン療法の種類などの点で、研究によって差があった。

主な結果

14件の適格な研究が特定されたが、関心を持った主な比較(エストロゲン療法単独と無治療との比較、骨盤底筋エクササイズとの比較、手術との比較、腟ペッサリーなどの器具との比較)を扱った研究はなかった。4件の研究では、腟ペッサリー単独療法と比較して、腟ペッサリー併用によるエストロゲン療法を評価しており、10件の研究では、手術単独療法と比較して、手術併用によるエストロゲン療法を評価している。

エビデンスの限界

研究方法に懸念があるため、エビデンスは非常に不確かである。女性たちは自分が受けている治療について自覚的であることが多く、それが結果に影響したかもしれない。加えて、多くの研究では参加した女性のサンプル数が少ない。

本エビデンスの更新状況

エビデンスは2022年6月20日までのものである。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、杉山伸子 翻訳[2024.01.24]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD014592.pub2》

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