陣痛の開始を遅らせる薬(子宮収縮抑制剤)は早産を遅らせるのに有効か。

要点

- 評価したすべての子宮収縮抑制剤(β受容体刺激薬、カルシウム拮抗薬、硫酸マグネシウム、オキシトシン受容体拮抗薬、一酸化窒素供与薬)およびそれらの組み合わせは、プラセボ(ダミーの治療)を投与した状態または子宮収縮抑制を投与しない状態と比較して、早産を48時間または7日間遅らせるのにおそらく有効か、有効である可能性がある。

- 子宮収縮抑制は、プラセボや無投与の治療と比較して、(軽微なものから重篤になりうるものまで)さまざまな望ましくない作用を引き起こす。β受容体刺激薬単独、あるいは複数の子宮収縮抑制を服用している女性は、望ましくない作用のために服用を中止する傾向が強かった。

- 出産前後の赤ちゃんの死亡や、お母さんと赤ちゃんの感染症への子宮収縮抑制の影響は不明であった。

レビューの論点

早産は、新生児が死亡する最もよくみられる理由であり、5歳未満の子どもの死亡原因の第1位でもある。早産とは、妊娠37週未満での出産を指す。出産が早ければ早いほど、赤ちゃんの状況は悪くなる。早産で生まれた赤ちゃんは死亡のリスクが高いだけでなく、重篤な病気にもかかりやすい。呼吸に関する合併症や、哺乳が難しい、体温調節がうまくいかないといった問題に直面する可能性が高い。長期的な合併症には、脳機能に関連した障害、肺や腸の合併症などがある。

重要である理由

子宮収縮抑制は、早産を遅らせ、早産で生まれた赤ちゃんの呼吸や哺乳を助ける薬や、赤ちゃんが脳性麻痺になる確率を下げる薬を投与する時間を稼ぐことを目的としている。重要なことは、早産を少しでも遅らせられたら、お母さんは専門医の治療を受けることができるということである。このコクラン・レビューの目的は、早産を遅らせるのに最も効果的で、望ましくない影響が最も少ないのはどの子宮収縮抑制であるかを明らかにすることである。関連があると考えられた研究をすべて集めて分析した(検索日:2021年4月21日)。

得られたエビデンス

エビデンスを検索した結果、6種類の子宮収縮抑制(β受容体刺激薬、COX阻害薬、カルシウム拮抗薬、硫酸マグネシウム、オキシトシン受容体拮抗薬、一酸化窒素供与薬)、複数の子宮収縮抑制の組み合わせ、プラセボまたは子宮収縮抑制なしの治療を含む、13,697人の女性を対象とした122件の研究が特定できた。122件の研究のうち、25件(20%)が最も信頼できるエビデンスであると判断した。全体として、エビデンスの質には大きなばらつきがあり、結果に対する信頼度は非常に低いものから高いものまであった。プラセボや治療なしの場合と比較すると同時に、異なる子宮収縮抑制剤同士も比較した。 

48時間あるいは7日間、出産を遅らせられるか
- β受容体刺激薬は、早産を48時間(9,853人)、あるいは7日(7,143人)遅らせる効果がある可能性がある。
- カルシウム拮抗薬は、早産を48時間遅らせる効果がある可能性がある。また、おそらく早産を7日遅らせる効果がある。
- 硫酸マグネシウムは、早産を48時間遅らせる効果があるかもしれない。
- オキシトシン受容体拮抗薬は、早産を7日遅らせる効果がある。また、早産を48時間遅らせる効果があるかもしれない。妊娠を平均10日間延長できる可能性がある(5,093人)。
- 一酸化窒素供与薬は、早産を48時間、また7日遅らせる効果があるかもしれない。
- COX阻害剤は、早産を48時間遅らせる効果がある可能性がある。
- 子宮収縮抑制の併用(最も一般的な組合せは、硫酸マグネシウムとβ受容体刺激薬)は、早産を48時間、または7日遅らせるのに有効かもしれない。
- 早産を48時間、または7日遅らせるのに最も効果的であったのは、一酸化窒素供与薬、カルシウム拮抗薬、オキシトシン受容体拮抗薬、および複数の子宮収縮抑制剤の併用であった。

重篤な副作用と副作用による治療中止
- 子宮収縮抑制剤は、プラセボまたは無治療と比較して、広範な重篤な副作用と関連している(6,983人)。
- β受容体刺激薬単独と複数の子宮収縮抑制の併用は、最も望ましくない効果を引き起こし、多くの女性が治療を中止した。
- 子宮収縮抑制の投与は、プラセボまたは無治療と比較して、28日後までの赤ちゃんの死亡(8,395人)およびお母さんの感染(1,399人)において、幅広い治療効果と関連しており、その効果は不確実であった。 

訳注: 

《実施組織》杉山伸子、 小林絵里子 翻訳 [2024.07.24]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD014978.pub2》

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