超早産児または極低出生体重児の壊死性腸炎予防のためのプロバイオティクス

本レビューの論点
プロバイオティクスを超早産児や極低出生体重児に与えることで、壊死性腸炎を防ぐことができるか

背景

超早産児(8週以上早く生まれた児)や極低出生体重児(出生時の体重が1.5 kg未満の児)は、壊死性腸炎を発症するリスク(危険)がある。壊死性腸炎は、乳児の腸の内壁の組織が炎症を起こし、死に至る重篤な疾患である。この疾患は、死亡、重篤な感染症、長期障害、発達障害につながる可能性がある。

知りたかったこと

壊死性腸炎を予防する1つの方法として、プロバイオティクス(潜在的に有益なバクテリアや酵母を含むダイエタリーサプリメント(栄養補助食品))をミルクに添加することが考えられる。我々は、プロバイオティクスの補充が超早産児や極低出生体重児にベネフィット(有益性)があるかどうかを検証したいと考えた。具体的には、プロバイオティクスの補充が、プラセボ(ダミー治療)や無治療よりも改善効果があるかどうか検証したいと考えた。

- 壊死性腸炎
- あらゆる理由による死亡
- 重篤な感染症
- 出生からの入院期間
- 神経発達障害

実施したこと

超早産児・極低出生体重児の壊死性腸炎予防のためのプロバイオティクスの使用を検討したランダム化比較試験(参加者を無作為に2つ以上の治療群のいずれかに割り当てる試験)を同定するために、いくつかの重要なデータベースを検索した。研究結果を比較および要約し、研究方法や規模などの要因に基づいてエビデンスの信頼性を評価した。

わかったこと

参加者11,156例を対象とする60件の試験を同定した。ほとんどの試験は小規模で、設計上の欠陥があったため、調査結果に偏りが生じる可能性があった。

主な結果

超早産児や極低出生体重児にプロバイオティクスを投与すると、プラセボ投与や無治療の場合と比較して、壊死性腸炎のリスク(危険)が低下する可能性があり、おそらく死亡リスクも低下すると思われる。プロバイオティクスは、おそらく重篤な感染症にはほとんどあるいは全く効果がなく、障害や発達の転帰にもほとんど影響がないと思われる。極早産児(12週以上早く生まれた児)または超低出生体重児(出生時の体重が1.0 kg未満の児)の壊死性腸炎、死亡、重篤な感染に対して、プラセボ投与または無治療と比較したプロバイオティクスの効果はほとんどあるいは全くないと思われる。

エビデンスの限界は何か?

これらの試験に用いられた方法は、超早産児や極低出生体重児にプロバイオティクスを投与することの利点を誇張している可能性がある。さらに、信頼性の低い方法を用いた小規模試験によって、効果に偏りが生じた可能性もある。

超早産児または極低出生体重児におけるプロバイオティクス補充の効果に関するエビデンスの信頼性は低いまたは中程度に過ぎないため、方針と実践に情報を与えられるほどの妥当性と適用性のあるエビデンスを提供するためには、大規模で質の高い臨床試験を追加する必要がある。

本エビデンスの更新状況

本エビデンスは2022年7月現在のものである。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2024.10.31] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 【CD005496.pub6】

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